出版社内容情報
乱世の時代に今川家を隆盛に導き、死の間際まで当主の役目を果たそうとした男の物語。
内容説明
強い今川家を目指し、検地や寄親・寄子制を導入するなど制度改革を行い、古臭い家風を変えようと当主として肝胆を砕く義元。東に北条、北に武田、西に織田という手強い相手に囲まれつつも、冷静沈着で独自の情報収集網を持つ地獄耳の師僧・太原雪斎の意見に耳を傾けながら、義元はいつしか「海道一の弓取り」と称されるまでになる。しかし、雪斎亡きあと正確な情報を得られず判断が鈍り始めると、いつしか織田への疑念が生まれていた。甲相駿三国同盟を成立させ、今川家を繁栄させた名将は、篠突く雨の桶狭間で運命の時を迎える。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
オーウェン
52
今川義元が桶狭間で織田信長に敗れたことは分かっている。 その代えられない史実に至るまでの義元の人生を紐解く。 生まれに名僧の雪斎に引き取られ、僧の道へと向かう義元。 だが長兄の2人が死に、将軍の座を引き継ぐ羽目に。 そして北条や武田との駆け引きから、うつけ者と呼ばれる織田信長との戦いに臨む。信長の実力をはき違えたことで、あっさりと訪れる死。 実際今川義元は実力者であるのだが、桶狭間の負け方によって信長の噛ませ犬になった感があるのは本人としても無念が残る武将だった。2023/06/17
えんちゃん
50
今川義元といえば桶狭間で信長に負けた武将のイメージ。静岡県民ならスーパーで働く義元をCMで見たことあるかもだけど。甲斐・相模を牽制しつつ三河も気にして駿河を守らなきゃならない。忙しい。賢くて思いやりがあって普通に良い人。だけど生き馬の目を抜く戦国時代ではもっと奇天烈でもっと卑怯じゃなくちゃいけない。雪斎しか頼れる人がいなくて部下に恵まれなかったのも痛い。現代なら人望を集められる好人物だったと思う。2025/02/10
saga
48
史実である桶狭間の戦いに向かって、今川義元が死に至る瞬間までをカウントダウン方式で綴る本作。今川家の家督相続を期待されない五男として善得寺に預けられた義元だが、そこで太原雪斎に運命的に出会ってしまう。戦国時代、甲斐・相模・駿河三国の離合集散の中で危機を乗り切る義元・雪斎の姿を読むと、義元も苦労人なのだと思える。本作では偏諱を与えられた松平元康と良好な関係性であったように描かれているが、家康の伝承を見るとどうだったろうか? などと邪推してしまう……2025/04/17
ポチ
40
あまり良いイメージで描かれない義元だが、実像は本書に近いといいなぁ、と思いながら読んだ。義元•氏康•晴信の腹を割った楽しげな三者会談のこの頃が義元にとって一番充実していた時なのかも。雪斎以外に情報入手手段が無かった事が悔やまれる。2025/01/09
マツユキ
19
桶狭間で死ぬ義元の師、雪斎との出会いから始まる物語。五男で、寺に預けられ、僧の暮らしがあっていたのに、長男次男が亡くなった事で今川家を継ぐことに。北条家に頼りぱなしで、弱い今川家をどうするか…。読み始めたら大物として登場することが多い義元、晴信、氏康の青年時代というのが面白いです。戦をしているし、油断はならないけど、分かり合えている関係が本当に好きです。でも、時代は移り変わり…。読み終わると、なるほどと思える表紙。雪斎の存在の大きさと、義元の苦労がよく分かりました。2023/08/26