内容説明
亡き人から届いた一通の手紙、そこからすべては始まった。雑多な風景が残る下町にすぎなかった川崎は、高度経済成長の波に乗り発展を遂げた。そんな川崎の秘密を知り、鍵を握る一人の男は、土手に住む者たちからスーツを着たお偉いさんまで、多くの人に愛されていた。その彼が残したひとつの「後悔」。それを晴らすため、悪戯好きの町泥棒が覚悟を決め、世話になった人たちが恩を返すべく動きだす。そして、それぞれの想いがつながった時、奇跡の夜が幕を開ける。あの時こうしていれば、伝えていれば、生きている時になぜ、できなかったのか。文芸社文庫NEO小説大賞受賞作家が描く、大胆不敵な物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
なみ
10
とある人物の後悔を晴らすため、暗躍する町泥棒が川崎を盗む話。 最初はバラバラだった登場人物やストーリーが、読み進めるにつれ、1本の線に収束していく展開が面白かったです。 テンポの良い文章も心地よく、とにかく爽快感がすごかった。 読み終えたあとにもう1周したくなるタイプの作品で、あのときのあれはそういうことだったのか!という発見がたくさん出てきました。2025/03/24
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6
先日読んだ「刑事の枷」に続き、舞台が川崎という1点に惹かれて読み始め。多くの登場人物がからみ、張られた伏線が回収されていくのはよかったです。一方、そもそもタイトルの町泥棒って何?という点が払拭できず。自分であまりにも壮大なものをイメージしすぎていたように思います。とは言え、アゼリアをはじめ、川崎駅東口周辺によく行く方にオススメです!2021/11/19