内容説明
少年は廃墟の礼拝堂の地下洞窟で、灰色の石に生命を吸い取られながら、けなげにも生きている女の子に出会うが…、悲しい定めの待つ『悪にまじって』。暮れ時の渡し場、大金を運ぶ馬車に付きまとう不気味な4人連れ、待ち伏せを予期しながら「悪魔の岩」に近づく馬車―鬼気迫るテンポで事件が展開する『殺し屋』。「人は幸福になるために創られた」、さりながら、何かしら物悲しさの失せない『パラドクス』。明るいヴォルガ流域、だが、背後に二十世紀ロシヤの暗雲の到来を予感させる『川がはしゃぐ』―その他4篇を収録。
著者等紹介
コロレンコ,ヴラジーミル・ガラクチオーノヴィチ[コロレンコ,ヴラジーミルガラクチオーノヴィチ][Короленко,Владимир Галактионович]
1853~1921。十九世紀ロシヤ文学最後の大家。シベリア追放から帰還した80年代半ば以降、精力的に文学活動を始めるが、同時代のチェーホフと違い、権力の不法な弾圧を糾弾して止まなかったことに対して、検閲が立ちはだかり、長編の執筆を断念させた。以降、ジャーナリズム活動へ向かい、結果として、純文学作品は十九世紀に発表された中・短編にほぼ限られることになる。だが、その後もは文学への志向を捨てず、十九世紀ロシヤ文学の掉尾を飾る自叙伝『わが同時代人の歴史』(全四巻)を書き続けた
斎藤徹[サイトウトオル]
1934年東京生まれ。早稲田大学第一文学部露文科卒業。一橋大学社会学研究科修士課程修了。その後、ロシヤ文学を離れ、私立女子高校の教諭として定年まで勤務。退職後、ロシヤ文学に戻り、コロレンコ著『わが同時代人の歴史』の邦訳に専念(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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