内容説明
初刊のデザインの香りをつたえる新しい愛蔵版詩集シリーズ。雪降る町で織りなす恋愛を若い感性が描く。
目次
雪明りの路(雪明りの路・細目)
著者等紹介
伊藤整[イトウセイ]
1905年1月16日北海道松前郡炭焼沢村に生まれる。1925年、小樽高商を卒業。小樽市中学校英語教諭となる。1927年、東京商科大学本科に入学。1928年、東京商大に復学。1929年、批評雑誌「文芸レビユー」を創刊。1931年、「文芸レビュー」廃刊。東京商大を退学。1935年、日本大学芸術科講師となる。1948年、日本文芸家協会理事となる。1949年、日本ペンクラブ幹事となる。1958年、東京工業大学教授となる。1962年、財団法人日本近代文学館設立とともに理事に就任。日本ペンクラブ副会長。1963年、『日本文壇史』により菊池寛賞を受賞。1964年、日本近代文学館が菊池寛賞を受賞。東工大教授を辞任。日本近代文学館副理事長に就任。1965年、日本近代文学館理事長に就任。1967年、日本芸術院賞を受賞。1968年、日本芸術院会員。1969年、ガン性腹膜炎のため死没。19日、川端康成を葬儀委員長に、日本近代文学館、日本ペンクラブ、日本文芸家協会の三団体合同葬が青山葬儀所で行われた。翌45年3月、『変容』により日本文学大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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SIGERU
14
北海道生れの文学者で、詩人として出発した伊藤整の最初の詩集。のちにはジョイスの影響を受けた新心理主義の小説家・評論家として知られる彼ですが、21歳で自費出版したこの詩集には、若き日の素朴きわまる抒情が溢れています。ほぼ全篇に通底するのは雪のイマージュ。「一日街の乙女らに目を燃やす私を その人は いつも泣いていさめて行くのだけれども」。余韻を残して歌い終わる『雪あかりの人』は、さまざまなアンソロジーの寵児ともいうべき恋愛詩の名品です。数年前の厳冬のさなかの札幌・小樽への旅を思い出しながら懐かしく読みました。2020/12/22
のし
6
序文の他に一一六篇の詩が入っています。風物を扱ったとみられるもの二六篇、恋愛に関係していると見られるもの四一篇、自己ないしは社会的なものに関係していると見られるもの二八篇、家族又は友人に関係しているもの二○篇、それらを総合的に扱った散文詩を巻末に一篇です。2018/01/22
u
5
「僕はいちにち/あなたの美しい目に秘めておかうとして蒼ざめるのだけれども、/すももの花がしきりに散つても/更けてゆく春を悩ましいとあなたは感じないのだ。/呼べば/首かしげて微笑むだけで。」(「あなたは人形」より) 季節の移り変わり、深まる緑や青い雪明り……に、感じやすい少年の心が投影される。センチなのに臭くならないのは、自然の鮮やかさと、シンと冷えた、瑞々しい北の大地のためか。『若い詩人の肖像』を読んでいるので、詩の背景が自ずから見えてくる。少年が大人になるときの、おののきと抵抗、淋しさ。しづかな雪明り。2018/02/06
う
3
北の自然は情熱的な言葉や物凄い熱量で描くイメージがあった。けれど21歳の伊藤整が暮らす北海道は淡々と静かで、ふっくらと豊か。此処での自然は季節を通して音が、他の土地と違うのかも、と思える表現が多い。人の手が加わらないものたちに感じ入って、そこに暮らす自分と、〝私の知つて來た數かづの姿/記憶の表にふれたすべての心〟を思い起こして抒情詩にする。涙にうるむこと 泣くこと 泣かされること が多く 良い朝や余市の浜のかがり火に心が安定しない、そういう若さが好きだ。表現は大人びている、けれど感性はみずみずしい。佳い。2020/10/31
按摩沙弥
1
あまりにも若さがにじみでている詩集だが、小樽に住んでいる者にとっては、愛着のある作品。2020/04/05