出版社内容情報
初版重視の実用的校訂版。編者のアドバイスをグレーで付加。本巻は1788~9年に作曲された4曲を収録。
モーツァルト演奏の伝統を継承する編者が、演奏法と解釈を伝えるべく情熱を注いだ実用的なエディションである。本書は初版を重視して校訂をしているが、モーツァルト作品の美しさに迫るには、当時の記譜法、特にアーティキュレーションを書かれたとおりに演奏するだけでは不十分。楽譜に託されたイメージやニュアンスを感じ取り、生き生きと表情豊かに弾くには、古典派の演奏法に対する理解が不可欠だ。そこで本書は、編者推奨のアーティキュレーションを原典に由来する記譜と見分けられるようグレーで付加し、音楽の捉え方を感じられるように配慮した。また、スラーにつけられた「こぶ」はモーツァルトの音楽を語るように表現する手掛かりとなるだろう。さらに強弱や装飾音などの演奏法についても、前書きや脚注で詳細に解説を加えている。特に抑揚に関しての記述は、古典派の音楽を学ぶ人には必読である。
本巻は、1788~9年に作曲されたKV533/494, KV545, KV570, KV576の4曲を収録。
[曲目]
モーツァルト:ピアノ・ソナタ ヘ長調 KV533/494
モーツァルト:ピアノ・ソナタ ハ長調 KV545
モーツァルト:ピアノ・ソナタ 変ロ長調 KV570
モーツァルト:ピアノ・ソナタ ニ長調 KV576
【著者紹介】
編集・運指:東京に生まれる。バドゥーラ=スコダにその才能を認められて16歳で渡欧、ウィーン国立音楽大学に入学。8年間の課程をわずか3年で終え、弱冠19才にして最優秀の成績で修了。数々の国際コンクールに優勝・入賞し、コンサートピアニストとしてソロ、アンサンブルとも国際的な活動を開始する。27才の時にウィーン国立音楽大学ピアノ専攻科にて日本人初の講師として抜擢された。演奏活動、教育活動とともにヨーロッパの音楽出版社における原典版楽譜の編集作業にも携わるなど幅広い活動を展開し、1995年に帰国。通算24年ものヨーロッパ滞在経験は今井の音楽に独特の味わいをもたらし、日本の誇る国際派ピアニストとして内外で高い評価を受けている。1995年、世界に通用する演奏家を育てた功績が評価され、オーストリア政府から名誉教授の終身称号を授与された。 現在は演奏活動のかたわら国立音楽大学大学院教授として後進の育成に携わっている。社団法人全日本ピアノ指導者協会評議員。