内容説明
その重厚な響きは、ドイツへの鎮魂歌だった。大自然やイタリアに憧れ、民衆の音楽を愛しながら、ドイツ音楽の保守本流を貫いた巨人の音楽宇宙を描き切る。
目次
生涯篇(若き日のブラームス;「新しき道」―ブラームスのデビュー(一八五三年~六二年)
ウィーン時代の始まりと多彩な活動(一八六二年~七五年) ほか)
作品篇(交響曲;管弦楽作品;協奏曲 ほか)
資料篇(ブラームス年表;作品一覧)
著者等紹介
西原稔[ニシハラミノル]
山形県生まれ。東京藝術大学大学院博士課程満期退学。桐朋学園大学音楽学部教授・学部長。18、19世紀を主対象に音楽社会史や音楽思想史を専攻(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ジョンノレン
50
何故かブラームスの気分で複数本借りてきて、つぶさには把握していなかった生涯と共に聴き込めていなかった曲群をyoutubeで味わいつつたっぷり時間をかけて読んだ。その曲想を覆う悲観或いは悲嘆的要素は年少時のハンブルク大火の経験との著者の類推の根拠は定かではないが、生来の性格や環境が微妙に影を落としていたことは伺える。ただ15才位から作曲の才能を発揮し20才前後でシューマンの評価を得て、持ち前の旺盛な探求心でバロックから同世代まで研究し尽くして自身の作曲の糧にしており、才能と努力の人であったことは間違いない。2024/01/08
Yoshi
1
作曲の勉強と仕事の関係で弦楽の作り方の手法の基礎は知ってはいるものの、それを作り上げてきた人達の人生感や、もっと作品が知りたいと思い通読。 シューマン夫妻との関係やワーグナーとのライバル関係やヨハン・シュトラウス、チャイコフスキーとの関係やドヴォルザーグとの関わりやシューベルトの研究の話等。 ベートヴェンの後継者の扱いというのも面白かった、そしてロマン主義だが古典主義でもあり彼の死と共にロマン主義が終わるというのも物語を感じる。 ナチスになる前のドイツで芳醇なドイツの国粋的な物の美観を感じる作曲家だった。2020/08/06
スリカータ
1
濃密な内容で、読み応えがある良書でした。ブラームスの伝記はクララ・シューマンとの恋愛を主軸のものを読んだことがありましたが、本書は作品背景や仕事内容に重きを置いており、実直で研究熱心、質素な生活を好んだブラームス像が浮かび上がります。驚くことには、同時代にブラームスと関わりを持った著名な作曲家の多さです。ブラームスを知ることはロマン派から近代へと移り変わる西洋音楽史を知ることにも繋がります。2016/03/24
Takuji
1
作品成立の背景はもちろん、シューマン、ワーグナー、シュトラウス、チャイコフスキー、ドボルザークらとの関わりも記載されており、音楽史の繋がりが広がって興味深かった。2014/02/09
ヤクーツクのハチコ
1
前書に「これまでのブラームス評伝では、人物エピソードに紙面が割かれている傾向が強く・・・本書では、作品成立の背景についてより多くのページを割いて」とあるように、各々の楽曲成立の背景を当時の関係者の書簡手記などをもとに解説。しかし物語性もあり楽しめる。「四度音程の基礎動機の用法や主題の逆行形を指摘して」等ド素人の私には「?」な説明ではあったが。しかしブラームスってすごく勉強熱心というか勤勉だったのね。好んだバッハから同時代の作曲家の作品研究過程を読んでいると、いろいろ聞き比べたくなってくる。2012/05/27