内容説明
超絶的な技巧と華麗な楽曲は人間の本質に迫るための手段にすぎなかった―大ヴィルトゥオーソとして近代ピアニズムをうち立て、音楽の宗教性と未来を志向した作曲家の生涯をたどる。
目次
生涯篇(少年時代;一八三〇年代のパリ・ロマン主義の幕開け;マリー・ダグー伯爵夫人―旅人のアルバム ほか)
作品篇(ピアノ曲;室内楽曲;オルガン曲;管弦楽曲;協奏的作品;宗教的声楽曲)
資料篇(リスト年譜;ジャンル別作品一覧)
著者等紹介
福田弥[フクダワタル]
1966年、水戸生まれ。慶応義塾大学文学研究科後期博士課程満期終了。音楽学(西洋音楽史学)専攻、リスト研究。1995~97年にハンガリー政府給費生(特別研究員)としてブダペシュトのリスト音楽院に留学。慶応義塾大学、明治学院大学、昭和大学で非常勤講師を務める
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感想・レビュー
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ミー子
7
リストのピアノ曲を弾くので、伝記を読んでみた。リストというと、超絶技巧のピアノ曲というイメージがあり、その割にまるでショパンのような詩的な曲もたまにあることや、失神するファンがいた位の超人気ピアニストだったこと、くらいのイメージだった。でもこの本を読んで、「音楽は本質的に宗教的である」と考えていたことや、若い頃から晩年まで深いキリスト信仰があったこと、下級聖職者にまでなっていたこと、など初めて知った。リストのイメージが変わったし、私はやっぱりリストの音楽が好きだと思った。2020/07/23
KUMAPON
5
コロナで中止になってしまった花組公演の代わりにと日比谷の図書館で借りた1冊。フランツ・リストの宗教観、音楽観、社会に対する使命感。同時代を生きた音楽家たちとの幅広い交流と、若手への惜しみない支援。働きすぎと自信のなさとで鬱を患っていたなど意外なエピソードも。これまで「超絶技巧と美貌で貴婦人たちを夢中にさせたカリスマ」というリスト像しか持っていなかった自分の浅はかさを恥じつつ興味深く読んだ。2022/09/03
もぐを
4
大概のクラシックは眠たくなるのですがリストは眠くならない。で、興味を持ったので読んでみましたが半分も頭に入ってないと思います。少し間をあけても少し作品を聴いて読み直してみます。2019/09/10
汲平
2
以前はヴィルトゥオーソとしての姿ばかりが鼻について余り好きな作曲家でなかったのですが、CDボックスで宗教作品を聴いてがぜん興味が湧き、この本を読んでみた次第。スターピアニストで、若手音楽家への援助を惜しまず、家庭には恵まれず、最後は宗教に帰依したリスト。全体像が捕らえにくい実に興味深い人物です。2015/01/10
Yoshi
1
リストはそのエピソードからその当時のビートルズやマイケルジャクソンのような印象だったが、その当時の空気と実際はどうだったのかを知りたくて通読。 同じく新ドイツ楽派のワーグナーは楽劇へ行ったがリストは宗教音楽と交響詩という、音楽は詩的な物でなければといったアティテュードは共有されている。 様々な音楽家との交わりの項を見るとそれらロックスターと通じそうな純朴さを感じた。 稀代のヴァルチュオーソの楽曲は、本気で弾きたいと思った場合、まともにピアノならって毎日真面目に練習して最短17年かかるそうだ。2020/11/19
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