出版社内容情報
モーツァルト研究の第一人者として知られ、教育分野での功績もあった海老澤敏氏の傘寿を記念、世界一流の音楽研究家の51論文。
2011年11月22日に80歳となる海老澤敏氏は、東京大学文学部美学および同大学院を修了、モーツァルト研究の第一人者として知られる一方、国立音楽大学理事、学長、理事長、学園長として教育分野でも大きな功芳を上げる一方、2007年には文化功労者となった。また国際的にも、ザルツブルクのモーツァルト住居の復元に大きな貢献をし、オーストリア共和国有功勲章、学術・芸術第一等十字章を受けている。傘寿を記念して、世界一流の音楽研究家が論文を書き下ろしまとめたのがこの1冊である。51論文の書き下ろしが収められている。
第1章 海老澤敏をめぐって
海老澤敏とザルツブルク 友人たちの談話(カール=ハインツ・ルードヴィヒ)
海老澤敏先生との対話(徳丸吉彦)
海老澤敏の世界(渡辺千栄子)
第2章 モーツァルトとその世界
ニッセンのモーツァルト伝にまつわる知られざる資料(ルードルフ・アンガーミュラー)
モーツァルトとコンスタンツェ 1783年夏から秋のザルツブルク滞在 海老澤敏氏のための研究報告(ギュンター・バウアー)
モーツァルトと弦楽四重奏、そしてウィーンの弦楽四重奏曲(オットー・ビーバ)
ヴェローナのモーツァルトの肖像画に描かれた楽譜とモルト・アレグロ K72a(クリフ・アイゼン)
マリー・アンネ・モーツァルト嬢からマリア・アンナ・フォン・ベルヒトルト・ツー・ゾンネンブルク帝国男爵夫人へ――18世紀ザルツブルクにおけるある市民の女流芸術家の運命(ジュヌヴィエーヴ・ジュフレ)
忘れられたパパゲーノ、愛された〈春への憧れ〉―2つの唱歌を通してみる明治期のモーツァルト受容と楽譜出版―(長谷川由美子)
モーツァルトとウェーバー家の人々(樋口隆一)
モーツァルトとフリーメイスンの秘儀―『セトス』と『魔笛』をめぐって―(稲生 永)
「1788年」:C.P.E.バッハ、ブライトコプフ、フォルケル、スヴィーテン、モーツァルト(久保田慶一)
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの初期ピアノ・ソナタにおけるテクストの問題(ウルリヒ・ライジンガー)
思索するモーツァルトの声--ピアノ四重奏曲変ホ長調K.493における作曲の形而上学(ロバート・レヴィン)
作品目録の中のK. 490――モーツァルトの自作オペラへの追加曲をめぐる一考察――(松田 聡)
モーツァルトの跳躍 主題の成熟過程における~(前田 昭雄)
伝統の終わりに立つダ・ポンテとモーツァルト ―《ドン・ジョヴァンニ》への補注―(森 泰彦)
「モーツァルトのドイツ語リートにおける言語リズムの研究」(村田千尋)
モーツァルト《ツァイーデ》(K.344)とメロドラマ(西原 稔)
モーツァルト《ト短調交響曲》K. 550の“Corrupt Passage”再考(西川尚生)
モーツァルトの交響曲における展開部作法の変遷 「第2部分の前半」から、「展開部」への過程(佐野光司)
ロココとバロック ――モーツァルトのマーチについて――(佐々木健一)
日本における《魔笛》上演史とその特徴について(関根礼子)
モーツァルトからディドロまで―即興論の視覚から―(鷲見洋一)
≪新モーツァルト全集≫におけるスタカート記譜の校訂をめぐる諸問題(為本章子)
誰が「書かせた」のか ―弦楽五重奏曲ニ長調K.593フィナーレの作曲学的検証―(田村和紀夫)
《魔笛》の「ザラストロ」はどこから来たか ―ヨーロッパにおける「ゾロアスター」の受容とその変遷をめぐって(龍村あや子)
F.X.ニーメチェクの『モーツァルト伝』における「家郷性」について(安田和信)
モーツァルトはいかにして「クラシック」になったか(吉成 順)
第3章 西洋音楽研究
アドルノとオペラ 市民社会的音楽ジャンルへの批判と通路(長木誠司)
音楽とフリーメーソン:ジョヴァンニ・カルロ・コンチャリーニとベルリンのロッジ『友情』の音楽活動を記した年代記から(ジャコモ・フォルナーリ)
サリエリのオペラ――舞台以外でその音楽の同時代における受容史について(イングリッド・フックス)
ヘンデル――この類まれな人物への新しいまなざし(藤江効子)
フレーベル『母の歌と愛撫の歌』の音楽的研究――作曲者R・コールの音楽の作り方――(藤田芙美子)
モンテヴェルディの《ポッペアの戴冠》――問題作の解釈と評価をめぐって(磯山 雅)
ピュタゴラスによる「協和音程の数比」発見伝説(片山千佳子)
ドレスデン宮廷のイタリア・オペラ団楽長 アントーニオ・ロッティの雇用事情(川端眞由美)
M.P.G.de シャバノンの音楽思想のドイツ語圏での受容―ヒラーとの関係を中心に―(小穴晶子)
ポリーヌ・ガルシア=ヴィアルドが遺したもの:―没後100年に振り返る(小林 緑)
蔵書から見たヨーゼフ・ハイドンの啓蒙主義的知性(ウルリヒ・コンラート)
シュッツの《シンフオニエ・サクレ ?V op.12》(1650)における楽器の役割(正木光江)
「解明」から「創出」へ――シューベルトの人と作品での試み(茂木一衛)
アダムズ/セラーズ:《花咲く木》をめぐって(岡部真一郎)
J.A.P. シュルツ『民謡調の歌曲集』の特徴―18世紀後半のドイツにおける民衆啓蒙と音楽教育との関わりを視点として―(関口博子)
グスタフ・マーラーの世界観の枠組み―「復活」のテキストの解釈を中心として(高野 茂)
現代の英語賛美歌に見る「平和」の概念の拡がり(横坂康彦)
ジジェクの「混沌と絶望」と歴史的真実: ベートーヴェン的シニフィアンのちょっとした弁護 海老澤敏教授の傘寿に寄せて(ニール・ザスロー)
第4章 日本の音楽と文化
万国博覧会と明治日本の洋楽器――鈴木ヴァイオリンの事例を中心に――(井上さつき)
細川俊夫とモーツァルト――《月夜の蓮――モーツァルトへのオマージュ》をめぐって(楢崎洋子)
能音楽における掛声の意味(丹波 明)
『伴谷晃二作曲・企画構成<オロチ~火と水への讃歌~神楽とオーケストラのために>~創作過程についての一考察』(伴谷晃二)
略歴
業績
内容説明
音楽研究の21世紀への新たな展望を示す、方法論と資料研究を網羅した論文集。
目次
第1章 海老澤敏をめぐって(海老澤敏とザルツブルク―友人たちの談話;海老澤敏先生との対話 ほか)
第2章 モーツァルトとその世界(ニッセンのモーツァルト伝にまつわる知られざる資料;モーツァルトとコンスタンツェ1783年夏から秋のザルツブルク滞在―海老澤敏氏のための研究報告 ほか)
第3章 西洋音楽研究―(アドルノとオペラ―市民社会的音楽ジャンルへの批判と通路;音楽とフリーメーソン:ジョヴァンニ・カルロ・コンチャリーニとベルリンのロッジ―『友情』の音楽活動を記した年代記から ほか)
第4章 日本の音楽と文化(万国博覧会と明治日本の洋楽器―鈴木ヴァイオリンの事例を中心に;細川俊夫とモーツァルト―“月夜の蓮―モーツァルトへのオマージュ”をめぐって ほか)
付録 海老澤敏先生の略歴と業績(略歴;業績)