内容説明
オルフェオの昔からオペラ・セリアの主題であった神や絶対君主の〈恩寵〉は時代とともに効力を失い、代って〈自律〉が登場した。本書は、1780年『イドメネオ』によってはじめて誕生した〈自律〉が、『フィガロ』において幸福な頂点を迎えるが、その後《魔笛》ではすでに全体主義的支配への傾向を見せ、ついに1810年H.v.クライストの『公子ホンブルク』において崩壊して、遠くナチズムの予感をも響かせるようになるまでを描く〈フランス革命前後30年間の精神史〉である。
目次
自律と恩寵―モーツァルトのオペラについて(専制的支配者の没落;臣民のいない国;音の社会)
パミーナの第三の死―またはハッピーエンド(救いをもたらす3人の女性;自由への間道;「わたしはあなたの鎖を解きます」)
息子と父―クライストの最後の作品について(共同体の再構築;伝統の欺瞞;恐れとおののき。ひとつの後書)