内容説明
医療の現場であると同時に、研究機関でもある大学病院では、患者を被験者にした「臨床試験(人体実験)」が日常的に行なわれている。「一般的な治療」という名目で、患者自身にそれと知らせずに実行されている実験も少なくない。日本では、医師や製薬会社主導で進められている臨床試験に対して、患者の人権を保護する法制度が十分に整備されていない。こうした状況下で、金沢大付属病院の元患者遺族が、抗癌剤の比較臨床試験を無断で行なわれたとして国を訴えていた訴訟で、金沢地裁は、「臨床試験に対するインフォームド・コンセント」の必要性を認める画期的な判決を下した。同病院の産婦人科医師の「内部告発」を手がかりにしながら、この事件の背後にある、医学研究と患者の「人格権」をめぐる問題の諸層を明らかにしていく。
目次
第1章 金沢大学付属病院「臨床試験インフォームド・コンセント」訴訟の歴史的意義(始めに:判決の意味;事件の経過:無作為比較臨床試験の制度的矛盾;「臨床試験」とICの関係をめぐる歴史 ほか)
第2章 「病院内部」の視点から―訴訟の背後にある医学界の構造的諸問題をめぐって(私が訴訟に関わった経緯;「臨床試験」とは;訴訟に至るまで ほか)
第3章 患者側にとっての医療紛争過程(問題の設定;訴訟前の紛争交渉過程;訴訟と日常性 ほか)
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
金沢大学法学部助教授。社会哲学・比較文学
打出喜義[ウチデキヨシ]
金沢大学医学部専任講師。産婦人科
仁木恒夫[ニキツネオ]
久留米大学法学部専任講師。法社会学
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