内容説明
近代法は、国家を構成する各人の自発的な合意に基づく「正義」の大系と、自らの行為の帰結に対して「責任」を取ることのできる「自由意志」の主体の存在を前提に構築されてきた。ロールズやドゥウォーキンなどによって開拓されたリベラルな法・政治哲学もこの前提に依拠している。しかし、脳科学、認知科学、生命科学などの発展に伴う「人間」観の変容と、環境面からヒトの行動、更には心までも制御できる可能性を秘めた「アーキテクチャ」的技術の台頭によって、「法」の意味するところが改めて問い直されようとしている。普遍化可能性を追求し続けてきた「法」の本質とは何だったのか、法哲学の諸分野の最新の議論に基づいて再考する。
目次
「アーキテクチャ」と「法」と「私の自由」
環境犯罪論の台頭―状況的犯罪予防論の人間観
「フーコーと法」の現在―法の排除から法の再導入へ
立憲段階とはどのようなゲームか
合理的譲歩の根拠とは何か?―ゴディエのMRC原理に対する批判的検討を通じて
私の生の全体に満足するのは誰なのか―Whole Life Satisfaction説の諸相
リバタリアニズムの自由論―自由の正当性をめぐる一考察
法実践における「事実」―佐藤節子の「事実」の分析とH.パトナムの形而上学的実在論批判
批判法学によるホーフェルド解釈
語用論的な法概念について
代行判断の法理と自己決定権の論理―生の両端領域から考える“近しい者の法的位置づけ”
身分契約の人類学―人と人の絆を律する法
一九世紀ドイツ国法学における社会契約論批判―「法」と「法律」を中心に
法律は一般的でなければならない―アリストテレスとシュミットを手がかりに
「歴史の終わり」と正義―コジェーヴとレヴィナス
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
金沢大学法学類教授。政治思想史・法理論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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