内容説明
金沢大学附属病院に入院していた卵巣癌の患者に対する抗癌剤の無断臨床試験をめぐる訴訟で、名古屋高裁金沢支部は、「他事目的」説明義務を果たしていなかったとして大学側に損害賠償を命じた。大学の調査委員会も、この患者を含む二十四人の元患者に対して、正式のインフォームド・コンセントなしに臨床試験が行われたことは認めた。にもかかわらず、臨床試験の責任者の産婦人科教授は厳重注意を受けるにとどまり、大学は責任の所在を曖昧にしたまま事件を幕引にしようとしているように見える。病院であると同時に研究機関でもある「大学病院」という特殊な環境における「医師と患者」関係に内在する根本的な問題を、総合法的な視点から分析する。
目次
第1章 「人体実験」とインフォームド・コンセント―金沢大学医学部附属病院無断臨床試験訴訟で浮上した問題(はじめに:名古屋高裁金沢支部判決が意味するもの;事件の経過:「無作為比較臨床試験」の制度的矛盾 ほか)
第2章 人体実験裁判に内部から係わってきて(金沢大学病院産婦人科で行われていた臨床試験;これら臨床試験に対する金沢地裁の判断 ほか)
第3章 事後的インフォームド・コンセントとしての「専門訴訟」運用(検討の視角;本件の審理経過と専門訴訟対策 ほか)
第4章 訴訟内外で連続する紛争交渉の展開―金沢大学医学部附属病院事件を素材に(訴訟外での関係動態;金沢大学医学部附属病院事件訴訟の展開 ほか)
著者等紹介
仲正昌樹[ナカマサマサキ]
金沢大学法学部教授。社会哲学・比較文学
打出喜義[ウチデキヨシ]
金沢大学講師。医学部附属病院産婦人科
安西明子[アンザイアキコ]
成蹊大学法学部助教授。民事訴訟法
仁木恒夫[ニキツネオ]
大阪大学法学研究科助教授。裁判学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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