内容説明
大陸での戦火が、太平洋へと大きく拡大していく1930年代から1940年代前半に、画家たちのあるものは、シュルレアリスムによってみいだされた造形の新天地へと逃れ、あるものは、戦争を記録する軍務に服した。選択の余地のほとんどなかった暗い時代に画家たちが、絵のなかにこめた切実なつぶやき。
目次
不安と戦争の時代
福沢一郎〈他人の恋〉
三岸好太郎〈海と射光〉
川口軌外〈少女と貝殻〉
北脇昇〈空港〉
靉光〈眼のある風景〉
山口薫〈蛸壷など〉
宮本三郎〈山下とパーシバル両司令官会見図〉
松本竣介〈立てる像〉
感想・レビュー
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秋津
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1930年代から40年代の「不安と戦争の時代」に生きた作家・作品を読み解く。靉光作品と、彼の描きまくり飲み込みまくるような制作の姿勢(水沢勉「靉光≪眼のある風景≫」)と、彼が戦時中に呟いた言葉(「総論」)が印象に残った。また、「この『眼のある風景』が完成作であることである。……署名がそれを明確に裏づける。……制作の過程のある時点で、たしかに飽和点が訪れ、作者がそれを作品として認可した……」との指摘は、署名の持つ「ピリオド」としての意味、そして作品と向き合うに当たっての一つの観点を得た気がした。2020/05/17