内容説明
「哲学者と動物」、「詩人と動物」と題されプリンストン大学でおこなわれたクッツェーの2度の講演は、高名な小説家エリザベス・コステロが、ある大学からなんでも好きなテーマで話をしてくれるようにと招かれ、講演をするというフィクションだった。クッツェーの講演と、それに応え、さまざまな学問領域の洞察を加えた序文と4つのリフレクションズで本書は構成されている。
目次
動物のいのち(哲学者と動物;詩人と動物)
リフレクションズ(マージョリー・ガーバー;ピーター・シンガー;ウェンディ・ドニガー;バーバラ・スマッツ)
著者等紹介
クッツェー,ジョン・M.[クッツェー,ジョンM.][Coetzee,J.M.]
1940年、ケープタウン生まれ。1983年、Life and Times of Michael K(邦訳『マイケル・K』筑摩書房)でイギリス・ブッカー賞、フランス・フェミナ賞受賞。1999年、Disgrace(邦訳『恥辱』早川書房)で2度目のブッカー賞受賞。ほかに『敵あるいはフォー』(早川書房)『少年時代』(みすず書房)など。2003年、ノーベル文学賞受賞
森祐希子[モリユキコ]
1957年生まれ。津田塾大学大学院博士課程後期文学専攻単位取得退学。現在、東京農工大学工学部助教授
尾関周二[オゼキシュウジ]
1947年生まれ。京都大学大学院博士課程哲学専攻単位取得退学。現在、東京農工大学農学部教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
130
どう読んでも考えても、帯にあることに集約される。『人間とは何か、動物とは、共感とは、いのちとは何か』1983年にブッカー賞の受賞したクッツェーが、1997 1998年にプリンストン大学で講演をした。2度目のブッカー賞も、ノーベル文学賞もこの時はまだ。講演で、彼は架空の初老の文学者『エリザベス・コステロ』に語らせた。彼女への質問も自ら繰り広げた(おそらく)。それは非常に抽象的で様々な示唆を含むものだった。だからこそ冒頭には長いガットマン氏の序文が、最後に考察が入る。クッツェーの講演のみ英語で再読したい。2018/08/06
shouyi.
4
不思議な小説だった。こういった構成の小説をメタフィクションというのだそうだけど、主人公エリザベス・コステロが語る主張もよくわからない。動物への虐待をユダヤ人の虐殺と類比させている箇所などは首を傾げざるをえない。むろん作者は意図的にそうしているのだ。文学の意味とか、動物のことを論じながら実は人間同士のあり方とか、いろいろ考えさせられた一冊だった。2020/02/02
しょ~や
2
動物の扱い方という点で、クッツェーの物語も面白かったが、その後の4人の論考も「そんな見方もあるか」と新鮮だった。動物と人間の関係は一つの立場を徹底して取ることがとても難しく思う。実際、本読んでてもいろんな立場の人の個々の意見に賛成だったり反対だったりした。2014/05/16
takao
1
ふむ2025/03/23
kogyo_diamond
1
『動物園・水族館閉鎖』読後、たまたま映画『キング・コングVSゴジラ』を見たので、レッド・ペーターについてのコステロの言い分を改めて咀嚼したく再読。クッツェーはコステロにペーターの反出生主義についてもさらり触れさせ、動物倫理の議論の周囲で起こっていることを漏らすことなく描いている。エイミーガットマンが指摘するように対立する感受性同士の和解がありうるのか、道徳に真剣な人々の昨今の行き過ぎるキャンセルカルチャーの傾向にも重なり溜息がでる。コステロ同様環境倫理には違和感しかない。熟考用にナッシュ『自然の権利』注文2021/09/08