出版社内容情報
実生活に根差して「男性」の範疇でトランス男性を捉え直すとともに、「男性学」に対して当事者の視点から問題提起する意欲作。
目次
第1章 トランス男性とは
第2章 既存の男性学と、トランス男性の不在
第3章 トランス男性の発掘
第4章 第一の切り口:フェミニズムに囚われるトランス男性
第5章 第二の切り口:トランス男性は男性学に潜在していたのか
第6章 第三の切り口:トランス男性の男性性を探して
著者等紹介
周司あきら[シュウジアキラ]
憧れの作家を追いかけて早稲田大学文学部へ。現在はホテルマンとして働きながら、別名義でLGBT関連のWebメディアに文章寄稿中(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
K(日和)
9
私が生きる社会に、既に存在しているトランス男性たちについて、私はあまりに知らなすぎる。私は、男性優位で、差別の蔓延る、この社会をどうにかしたい。が、私はその「男性」というジェンダーを、果たしてどの程度の解像度で理解しているか?誰かを排除していないか?それを自問するには知識が必要だ。 本書は「トランス男性」×「男性学」をテーマにしています。トランス男性が「トランス男性」であることの固有性と、既に「男性」として男性の内部に存在していることがあるという事実、そしてトランス男性特有の思考について記述されています。2024/01/12
そら
6
トランス男性が「男性」として語られてこなかったという批判。当たり前の指摘が、こうして本で明言されていることが喜ばしい。同様に、これまで自然と「男性」から弾かれてきたような「マイノリティ男性」の解像度があがっていきそう。 シス男性のゲイに対する態度と、トランス男性が捉えているゲイ像がずいぶん違うようで面白い。トランス男性を「女性」の範疇でフェミニズムに組み込もうとしている人からしたら、男性特権を得るトランス男性とか、男性化で孤独になることへの言及は意外性があるだろうし、ぜひ読んでほしい。2022/06/25
Bevel
5
トランス男性は、フェミニズムにとどまることはできない。フェミニズムは女性として生きてきた経験に根差す社会運動だから。他方で、トランス男性の居場所は男性学のうちにも見当たらない。一番近いのは弱者男性論かもだけど、どこか違和感が残る。それなら新しい言説を作るしかないという感じ。孤独だから新しくやろうというのは「男性的」だなって思った。性的な象徴(胸やペニス)に対する距離感があるという感じが伝わってきたので、経済や社会に溶け込む存在から表面的なものを引き算した、抽象的な男性性の方に向かっていくのかなとも思った。2022/03/08
Ayana
4
必読。わたしは何も知らなかったんやなぁと思いました。女の私にとっては、女性から男性になって周囲の対応が変わったという話は、なかなか衝撃的でした。女性差別はされている側も気付いてないことが多いのだな、と。フェミニズムとは離れざるを得ないFtMの苦悩もはじめて知りました。2022/12/11
乱読家 護る会支持!
3
著者は女性に生まれ育ち、今は男性として生活されている「FtM」の方。 トランスジェンダーの視点で、男性学を論じられています。 性、ジェンダーのことだけでなく、一人一人は、環境、家庭、宗教、死生観、仕事観、教育観などなど、皆違います。 本当はマジョリティなどは存在しないのだけれど、生きていく為に皆で架空のマジョリティを作り上げているだけなのかもしれません。 特に同調圧力の強く日本ではなおのことですね。 だから、マジョリティとの違いを恥じることも、不安になることもないと考えます。 2022/07/04