内容説明
世にも稀な高層湿原地帯として多くの人々に愛されてきた尾瀬。特別天然記念物に指定されたこの地も、すでに年間80万人もの入山者を迎え、貴重な自然を死の淵に追いやっている。よみがえれ尾瀬!―われわれは、美しい尾瀬を滅亡させたという汚名を後世から着せられてはならない。
目次
1 すばらしき尾瀬(極私的尾瀬賛歌;静かな秋の尾瀬)
2 カラスとミニスカート(大量高速交通網がもたらすもの;様変わりする尾瀬の玄関)
3 山も沼も原も荒れている(山上の楽園はいま;沼を占拠する外来植物;湿原のお化け植物群)
4 疑惑の“奥鬼怒スーパー林道”(林道建設をめぐる怪;加速される自然破壊)
5 よみがえれ尾瀬(自然保護運動のパイオニア―「尾瀬の自然を守る会」の活動;かくありたい自然保護)
付録 21世紀に引継づために―尾瀬の保護についての提言
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
roatsu
19
旅の宿の本棚より。今から30年以上前に痛憤とともに書かれた尾瀬の自然破壊の実態。今夏、五日間ほど滞在して二つの百名山と色とりどりの夏の花、多様な生き物など麗しい尾瀬に遊んだ身には衝撃的な内容ばかり。国立公園ですら逃れられなかった戦後日本の自然破壊の恥ずべき惨禍を直視すれば、日本人に欠落しているものは何かがはっきりわかるのではないか。無責任、無知、貪欲を絵に描いた様な自然を収奪する楽しみ方しかしない消費者、そこから短期的収益を上げるために自らの地域の自然遺産を生贄にする地元民、形式的な保護の掛け声のみで何ら2019/09/21