内容説明
アメリカ社会に今、何が起きているのか。事前予想を覆すトランプ大統領の登場は、アメリカ社会を蝕む深刻な病を浮き彫りにした。一握りの者への富の集中と、その経済的・社会的な帰結、そしてカネに支配された政治の実態を、豊富なデータから明らかにする。
目次
序章 格差に引き裂かれるアメリカ社会―オキュパイ運動と大統領選挙があらわにした亀裂
第1章 極度に集中する所得と富―1%が99%から吸い上げる膨大な富
第2章 格差を増幅させる経営者報酬の梃子―ウォール街と大企業経営者の一人勝ち経済
第3章 企業・富裕層の優遇税制と租税回避
第4章 格差で不安定化する経済―格差と富の集中が作り出す金融・経済危機
第5章 格差と金権政治の悪循環―政治資金の洪水に掘り崩される民主政治
終章 ウォール街の夢想、有権者の反乱―バナナ共和国を誰が変えるのか
著者等紹介
高田太久吉[タカダタクヨシ]
1944年香川県生まれ。中央大学名誉教授。専門はマルクス経済学、金融論(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
樋口佳之
26
財界と富裕層からの政治資金は、民主党よりも財界寄りと見られている共和党により多く流れていると考えている。しかし、労働組合と中間層を基盤にしていると見られている民主党が上位0・01%の富裕層から受け取る献金の総額は、1994~2008年の間の多くの選挙で、共和党の受け取り額を上回っていた。とりわけ、ゴールドマン・サックスの関係者をはじめウォール街が、民主党のキャンペーン資金の大口拠出者/華氏119の予習になったかな。/kindle 60%off にて2018/10/21
yo yoshimata
3
オススメの一冊です。米国の格差拡大が、経済と社会にどういう様相を及ぼしているのかを、米国内の経済学の潮流に立ち入って紹介されていて、とても勉強になりました。著者は留保しながら言っていますが、プランテーションと独裁を特徴とするバナナ共和国に米国がなりつつある、という話題は、米国にとどまらず、従属国・日本にも示唆的です。それを悲観的でなく、現代資本主義が直面する矛盾ーーつまり99%によって乗り越えられるべき事柄として捉えられている点も、読んでいて心強い。2017/11/03
WaterDragon
2
恐慌ーー近年でいえば、2007~09年の「世界経済危機」が記憶に新しいが、本書では、アメリカ社会を舞台として、 所得の格差の広がり、あるいは富の一極集中の深化こそが恐慌を引き起こす原因ではないか、ということが問題提起され、とても知的刺激的な内容。「本書における格差問題それ自体についての論述は〔…〕私の新たな発見と呼べるものはない」(8㌻)と述べながらも、格差と経済危機の関係に関する最新の議論も含めて詳細にまとめられている。けっして安くない定価だが、それ以上の「価値」があるように感じる。もっと売れるべき本。2017/07/17