著者等紹介
朝日千尺[アサヒチセキ]
元近畿大学教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ケイ
121
ギャスケル2冊目で、すっかり彼女のファンになってしまった。19世紀の小説の女性なら、結婚相手に恵まれれば大団円だとか、周りに献身的に尽くして自分の幸せは二の次だという読み手が地団駄踏むほどのお人好しか、玉の輿狙いの策士だったりして、私は読んでいてあまり楽しくないのだが、ギャスケルは献身的でありながらも大きな視野で物事を見て社会の問題も見据えて行動する女性を描く。まさに、芯が強くて優しくて賢い女性。ギャスケル自身がこういう人だったに違いない。工場主に惚れられて…とは、ありがちな設定なのに(続く)2017/02/12
まふ
101
産業革命の結果、勃興したマンチェスター等の「北部」産業・労働者地帯に移住した「南部」の旧来地主階級地帯の元牧師一家が経験するギャップを前面に押し出した作品で、ストライキ、工場ロックアウトなどあたかも経済史の教科書から出てきたような設定が興味深い。ヒロインのマーガレットは北部の人々の「かざらない」人柄に次第に共感しながらも、「人間としての」プライドを最後まで持ち続けて読者をはらはらさせつつ最後に納得させる。⇒2024/08/27
NAO
59
この時代のイギリスでは、南部上流階級の地であり北部は新興産業や商業の地であるという地域による階級格差があったことを理解していないと、この題が意図するところは理解できない。生活基盤をなくして北部に移り住んだマーガレットは、南部出身者であるために新興資産家に偏見を持っているのだが、彼女が労働者たちと身近に交流することで、いかにして北部への偏見をなくし、精神的にも自立していくかが描かれていく。ずいぶん高慢ちきに描かれているマーガレットだが、私は、オースティンよりギャスケルが描く女性のほうが好きかもしれない。2017/06/23
きりぱい
6
読み始めて早々、何だこの読みにくさは?誰が誰の話をしているのか、悲しいほど物語に乗っていけない・・。訳者のせいなのか、私のせいなのか、あとがきによるとギャスケルの文体にも問題あるようなのだけれど、とにかく原文に忠実もなにもすらっと読みにくい。イギリス南部の田舎暮らしから、北部の工業都市へと引越し、工場のストライキや労働者と関わるなかで、どうにも取り澄ました感じの抜けないヒロインが、時に母親から無体な扱いを受けて、家族の甘えに尽くしている姿勢はちょっと気の毒。勝手にやってよ~!な終わり方に笑ってしまった。2009/07/02