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内容説明
アルナウが戦場から戻って3年。海の向こうからやってきた不穏な影がバルセロナを襲った。黒死病である。パニックになった民衆は、恐怖をユダヤ人への憎悪にすりかえて爆発させた。ユダヤ人が襲撃されたのだ。この事件をきっかけに、アルナウはさらなる数奇な運命を辿ることになっていった―戦争、疫病、宗教間の対立や異端審問といった、史実にもとづくドラマは、加速度をつけて流れるようにクライマックスへと向かう。
著者等紹介
ファルコネス,イルデフォンソ[ファルコネス,イルデフォンソ][Falcones,Ildefonso]
1959年生まれ。スペイン、バルセロナ出身で本職は弁護士。『海のカテドラル』で、ホセ・マヌエル・ララ財団主催の年間ベストセラー小説賞(2006年)をはじめとするスペイン国内の各賞ほか、フランスのFulbert de Chartres賞(2009年)、イタリアのGiovanni Boccaccio賞(2007年)など、海外でも文学賞を受賞、高い評価を受けている
木村裕美[キムラヒロミ]
上智大学外国語学部イスパニア語学科卒。翻訳家、マドリード在住(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
34
【コロナ52-2】(上巻の感想から続く)中世のリアルが伝わってくるのは、主人公の設定が絶妙だからだろう。カタルーニャの農奴の息子。誕生直後に、悪名高い領主の慣習法に抗して父親に伴われバルセロナに逃亡する。陶工職人に身を寄せながら、馬丁→海の仲士(港の荷物の運搬人)→義勇兵→両替商→海事院法官(裁判官)→保険業と辿る彼の一生は、エキサイティングでありながら絵空事ではなくリアルなのだ。王国の政治史は当時の「年代記」(ペラ三世作)に拠り、多くの実在の人物が登場するだけでなく、バルセロナの市民の生活が都市の↓2020/09/06
Nat
19
下巻も主人公か数々の不幸に襲われるのをハラハラして読みました。登場人物の中では、ギジェムが好きでした。「風の影」に引き続きバルセロナ行きたい熱が高まっています。いつか行って、海の聖母教会を訪ねたいです。2019/06/03
RIN
12
歌劇か抒情詩のような壮大な物語だった。中世のヨーロッパは教会の鐘が鳴り響き「武器をとれ!」がお約束みたいだが、バルセロナ人も熱い人たちで、自分も一緒に駆け出したくなった。物語は壮大で面白いが、抒情性を排した割りと淡泊な印象もある。著者が弁護士作家らしいので納得かも。兼業作家さんは、過度に情緒的か、説明過多の場合が多いけれど、本作の場合、中世ヨーロッパの様々な事情に疎い身からすれば、丁寧な背景説明が嬉しい。2011/12/25
たみき/FLUFFY
7
読み終わって数日が経過しても余韻に浸っている。下巻は怒濤の展開で息つく暇もなかった。フランセスカの高潔さ、アレディスの愛情、マールの純愛。女運がつくづくないなと思ったけど、それぞれのスタイルでアルナウを守る。ギジェムの友人を想う気持ちと行動力に感動。そして、人が変わってしまったジュアンの決断。どれもが素晴しかった。アルナウの行動は、全て「情けは人の為ならず」信念に従って行動した時に蒔かれた小さな種が彼を救う事になった。この目で民衆のための海の聖母教会を見てみたくなる。2010/08/27
Fumie Ono
6
久しぶりに時間を忘れるほど本に没頭した。この物語の主人公はバルセロナであり、海の聖母教会と呼ばれる“Santa Maria del Mar”である。1329〜1383年に建設されたカタルーニャ・ゴシックの教会は、もともと小さなロマネスクの教会だった。建設においてはバスターシュ(海の仲仕)たち教区民がモンジュイックの丘から背中に石をのせて建築現場まで運んだという。 読み終えてからバルセロナを訪ねたいという衝動がおさまらない。次はこの教会を訪ねる。そして後陣の窓から流れ込む光につつまれる聖母マリアを見たい。2016/01/10