サラエボのチェリスト

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  • サイズ B6判/ページ数 285p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784270004654
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

内容説明

セルビア人勢力の攻囲下にあったサラエボ。戦争犠牲者の鎮魂のために、ひとりのチェリストが統弾も恐れず、二二日間街路で“アルビノーニのアダージョ”の演奏を続けていた。無差別攻撃の恐怖に怯え、水や食料の欠乏に苦しむ生活を強いられる市民の耳に届いたチェロの音色は、はたして彼らに何をもたらしたのか?実話をもとに、極限状態におかれた人々の揺れ動く心を描きながら、「人はどこまで人として生きられるか?」「人はどれだけ美しく、誇り高く生きられるか?」という問いを真摯に追求し、世界各国で絶賛を浴びた感動作。

著者等紹介

ギャロウェイ,スティーヴン[ギャロウェイ,スティーヴン][Galloway,Steven]
1975年、カナダのバンクーバー生まれ。2000年に、Finnie Walshで長篇デビュー、Amazonカナダの国内作家処女長篇賞にノミネートされる。2003年にAscensionを発表、これもエセル・ウィルソン賞の候補作に。現在、妻と二人の幼い娘とともにブリティッシュ・コロンビア州ニュー・ウェストミンスターに在住。ブリティッシュ・コロンビア大学などで創作講座の教鞭をとっている

佐々木信雄[ササキノブオ]
1934年、東京生まれ。早稲田大学第一文学部英文科卒業。1994年まで出版社に勤務、その後、翻訳家に(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

キムチ

59
子育てに埋もれ、サラエボ!気になるものの、この紛争の事実をよく知らなかった。悲劇の対岸に在る人間の極楽気分としか言いようもない。五輪の後、チトー死去、国の崩壊が始まり複数の民族の内戦が開始。実在人物のチェリストと「在ったであろう」3市民とスナイパーの存在をアイコンのように再構築してノベライズしている。連日平均329発の銃撃砲弾の中、流れる「アルビノのアダージョ」サラエボは死と共生することに甘んぜず、丘の上の敵の思い通りになるのを良しとしなかった・・ラスト、アローと称される無名の彼女がアリサと名乗り姿を現す2017/07/15

ケロリーヌ@ベルばら同盟

57
【第137回海外作品読書会】突如隣人が敵になる。わずか7年前、平和とスポーツの祭典が誇らかに開催されたスタジアムは、無辜の市民の墓場になる。日々の糧を、水を得るために、包囲された街を行く。高台から見下ろすスナイパーの、正確に飛来する迫撃砲の、標的となる恐怖に怯えながら。ついこの間の事だったのに。この世に生きることの素晴らしさに涙した日、美しい調べに心震わせた日、妻子と夏の宵を笑いさざめいて歩いた日は。悲哀と憎悪に疲弊した瓦礫の街と人々の心に、チェロの音色が沁みわたって行く。且ての、そして未来の光の様に。2019/07/14

星落秋風五丈原

47
史実に材を取った作品。章毎に視点が変わり、チェリストは冒頭に登場するのみで、それ以降はいわば物語の遠景になる。近景として登場するのは、丘の上に陣取って狙撃するセルビア軍に対応するスナイパーのアロー、家族と口やかましいアパートの住人のために水汲みに通うケナン、妻子を疎開させて妹の家に住むドラガンの三人で、彼等の動向が時系列に沿って描かれる。映画『戦場のピアニスト』にも戦場でピアノを弾く演奏家が登場したが、今回のチェリストは彼とは立ち位置が異なり、彼の心情は何一つ紹介されない。彼は演奏で語っている。2016/09/14

ぶんこ

46
新年を迎えた最初の本がこちらだったことに、複雑な気持ちとなりました。途中でサラエボ内戦を調べ、アルビノーニのアダージョを聴きました。民族間での独立を巡っての戦いと思って読み進めましたが、サラエボに居る全てが飢えている中で、政治家とギャングは例外とあって気付きました。戦争を起こすことで肥えている人々がいる。被害の及ばない地区へ逃げるトンネルがあるのに、弱者を逃がすことなく、支援物資を受け入れ、それを被災民に渡さずに売り付ける人々。見ている前で人々が殺され、追悼するために演奏を続けたチェリスト。戦争が怖い。2019/01/02

Apple

40
理不尽に日常が奪われ、狙撃と迫撃砲の攻撃と隣り合わせの生活をしている人々が描かれます。絶望的な状況で、自分の命が危険に晒されているにも関わらず、人間としての誇りを忘れず勇気を振り絞る登場人物たちの姿に心を打たれました。チェリストの存在とその奏でる音楽が、彼らの人間性を取り戻してくれているような気がしました。ドラガンが狙撃の危険を顧みず、交差点で斃れた男性を回収する場面など、人としての誇り•道徳が恐怖心を覆したように感じられてとても良かったです。絶版となってしまっているのが残念な、名作だと感じました。2023/08/16

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