内容説明
838年、最後の遣唐使として大海を越え、唐に渡った天台宗の高僧・円仁(のちに慈覚大師)。五台山で最高峰の密教を学び、国際都市・長安で世界の人々と交わり、廃仏毀釈の実態を目撃した彼は、9年間におよぶ詳細な旅の記録を『入唐求法巡礼行記』に綴っていた。それから1200年あまりのち、『入唐求法巡礼行記』はエドウィン・O・ライシャワー元駐日大使の著作によって世界中に伝えられ、現在では世界的名紀行文のひとつに数えられている。このライシャワーの研究に触発されたアメリカ人女性、阿南・ヴァージニア・史代は、円仁の足跡をくまなくたどることを決意する。25年の歳月を経てついに完結した彼女の旅の記録からは、悠久の歴史ロマンと、現代中国の息吹が鮮やかに浮かび上がってくる。
目次
円仁と遣唐使節団、唐国に到着
揚州に滞在する
運搬船で楚州へ
黄金を渡って海州から乳山へ
赤山の新羅人による庇護と助言
蓬莱で通行許可証を待つ
円仁青州府で歓迎される
禮泉寺から黄河への行路
唐代の道南宮から曲陽へ
太行山脈を越えて
古代の道と宿泊施設「普通院」
五台山での円仁(1)「竹林寺」
五台山での円仁(2)高僧との出会い
五台山での円仁(3)五台山巡礼
五台山を後にする
円仁の通った太原への道
太原府で盂蘭盆会を巡る
汾河に沿って続く旅
長安での円仁(1)経典と儀式を学ぶ
長安での円仁(2)国際都市の宗教儀式
長安での円仁(3)廃仏毀釈
迫害を逃れて長安を脱出
帰国の船を探す
円仁の帰還
著者等紹介
阿南,ヴァージニア・史代[アナン,ヴァージニアフミヨ][Anami,Virginia Stibbs]
歴史研究家。1944年、米国に生まれ、1970年に日本国籍取得。夫君は外交官・前駐中国日本大使阿南惟茂氏。夫とともに北京に3回駐在。アジア学(東アジア史・地理学専攻)によって修士号を取得し、現在、日本のテンプル大学で中国史を教える。20年以上にわたって円仁日記を研究、現代中国に9世紀の行路を追跡してその成果を写真に収録。円仁自身に関する研究も、雑誌『中国国家地理』『人民中国』『法音』などに発表している。NHKのドキュメンタリー『円仁五台山・長安への道』『円仁・大唐国旅日記』の制作に協力、出演した。日中両国各地で多くの写真展を開催、講演にも精力的に活躍中
小池晴子[コイケハルコ]
早稲田大学卒、イギリス近代文学専攻。日本観光通訳協会会員、翻訳業。観光通訳、海外旅行旅程管理者を経て1986年より東邦学園短期大学講師、国際プログラム担当。1993年より5年間、北京連合大学旅游学院にて「日本語」と「観光学」を教える。訳書の他に、著書や旅行エッセイなどがある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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まーくん
中津川文美敏