内容説明
クイズ番組でみごと全問正解し、史上最高額の賞金を勝ちとった少年ラム。警察は、孤児で教養のない少年が難問に答えられるはずがないと、インチキの容疑で逮捕する。しかし、奇蹟には理由があった―。殺人、強奪、幼児虐待…ずっと孤独に生きてきた少年が、インドの貧しい生活の中で死と隣あわせになって目にしてきたもの。それは、偶然にもクイズの答えでもあり、他に選びようのなかった、たった一つの人生の答え。幸運を呼ぶ1枚のコインだけを頼りにしてきた孤児の、残酷だけれど優しさに満ちた物語。
著者等紹介
スワラップ,ヴィカス[スワラップ,ヴィカス][Swarup,Vikas]
インドの外交官。トルコ、アメリカ、エチオピア、イギリスに赴任。現在はニューデリーの外務省に勤務。『ぼくと1ルピーの神様』で小説デビュー
子安亜弥[コヤスアヤ]
南山大学外国語学部英米学科卒。アメリア新人翻訳家コンテスト最優秀賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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たー
31
主人公の波乱万丈の人生をクイズ番組という形式を交えて表現し、さらにインド社会の抱える不幸をも描き出した秀逸な作品。個人的には映画よりこちらのが完成度が高いと思いました。2011/06/05
星落秋風五丈原
28
クイズ番組で史上最高額の賞金を勝ち取ったのは、学校にも行かず本も読まない少年だった。なぜ彼はクイズに全問正解できたのか。「あなたが答えを知っていたわけを理解するためには、あなたの人生全部を知らなければならない」少年の短い人生を追うことで、インドでの過酷な状況が見えてくる。そして不思議にそれらとクイズがつながっていくことも。ただ問題と人生を追うだけではなく、時々ひねりも入って、物語が退屈にならないように動いていく。 「結局クイズって、知識のテストというより、記憶のテストなのかもしれない」2007/01/29
assam2005
27
映画「スラムドック$ミリオネア」の原作。映画は未観。インドが舞台のせいか、国民性の違いを感じました。隠しもしない政治腐敗、貧困層と富裕層の経済格差、差別、虐待、強盗。そんな世界で生き抜くと言うことはこういうことなのだろうか。「周りの不幸を見ても影響されない」ことが、この世界を作り上げる。それでも身近な人達への恩義を忘れなかった主人公の生き方は一筋の光。才能とも言える記憶力と、逆境をも突き進むたくましさを武器に、自ら人生を切り開くそのパワーに圧倒されました。幸運すらも作り出してしまうパワー、さすがインド!2017/12/31
ally
26
全体的に軽くすらすらと読めた。クイズ番組で前代未聞の全問正解を果たし多額の賞金を約束された少年が、教育も受けていないのになぜ答えられたのか。1問ずつ辿っていく物語。天才的な〜系なのかと思っていたら全く違い、そこにはただただ生きるために嫌でも経験してきた出来事が関連しており、社会の不公平や腐敗や膿が色濃く書かれていました。淡々として読みやすいからこそ、描かれる現実の暗さが浮き彫りになる。社会に蔓延る色々な不公平が、クイズの正解のためにこれでもかとぶちまけられていく告発本のような印象も受けました。面白かった!2018/08/18
ふぇるけん
16
日本でいう『クイズ・ミリオネア』で、最高金額の賞金を獲得したのは貧困層の少年だった。きっと不正を働いたに違いないという疑いで少年が逮捕されるところから物語が始まる。すべての問題に、少年がこれまでに経験してきたさまざまな出来事が関連しており、そのエピソードを弁護士に語っていく。その中にインド社会の現実や課題が盛り込まれて読みごたえ十分だった。映画「スラムドッグ&ミリオネア」も観てみたい。2019/01/04