感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
小夜風
18
【所蔵】この巻は毒親に育てられてしまった子どもの苦悩が描かれている。可愛がられても、疎まれても、壊れてしまう子どもたち…。娘として読んでも、母親として読んでも、辛く重い話です。山岸凉子の描く話の特徴に、「母親に殺される(あるいは人格を壊される)子ども」があるが、それと同じくらい「父親に犯される(魂を殺される)子ども」が出てくる。「緘黙の底」は吐き気がするくらい気持ち悪いのだけど、魂を殺害された子どもたちが、もう一度息を吹き返すことを願ってやみません。「グリーン・フーズ」はカーペンターズ兄妹がモデルだそう。2013/11/29
くさてる
13
すべて既読でしたが、傑作ぞろいの短編集です。70年代の作品である「ひいなの埋葬」以外は、どの作品もテーマや作者の思想がはっきりと全面に出ていて、物語とのバランスが危ういほどですが、そのなかでも、カーペンターズ兄妹をモデルにした「グリーン・フーズ」が、完成度を含めて、いちばん怖い作品です。2014/11/30
直人
10
『鬼子母神』『グリーン・フーズ』『かぼちゃの馬車』『緘黙の底』『副馬』『死者の家』『ひいなの埋葬』 『かぼちゃの馬車』は今ひとつピンと来ないが,以外については相変わらず秀逸。 いずれの作品も短編としてよくまとまっているが,中には話を膨らませると長編として成りたつであろうし,読んでみたいと思わせるものもある。 たとえば『ひいなの埋葬』とか。2018/10/30
ぐうぐう
10
こうしてまとめて山岸涼子の短編を読んでいると、意外とベタなストーリーが多いことに気付く。例えば「グリーン・フーズ」は、典型的な子役スターの末路だし(しかもそこに、多くの人が知っているカーペンターズ兄妹のエピソードを重ねてもいる)、「緘黙の底」も先が読める展開だ。しかし、それは山岸涼子の意図したことなのかもしれない。彼女自身が語るように「緘黙の底」がテーマとしている児童虐待(しかも性的虐待)は、この作品の発表時期を考えると、とても先見性に満ちている。逆に言えば、そのテーマだけを切り取れば、(つづく)2011/05/20
冬峰
5
この山岸凉子スペシャルセレクション、表紙イラストがどれも良いなあ。でもこの巻についてる帯に「愛情の表現は十人十色」って書いてあるの、内容と全く関係ないないような…。どの作品のことだ?『かぼちゃの馬車』でもギリギリだぞ。小間使い扱いをやめないと結婚しないだろうし(家庭教師もそれで良いと言ってるし)。こういう初期っぽい作品でないと、山岸作品の女性主人公は幸せにならないのに、この帯は皮肉過ぎる。2023/09/10