内容説明
平成25年、愛知県南知多町の山中で、名古屋市の漫画喫茶女性従業員の遺体が発見された。傷害致死容疑で逮捕された元経営者夫婦が黙秘に転じ、「死因不明」で不起訴となる。真実を求める被害者遺族らの闘いを追った『黙秘の壁 名古屋・漫画喫茶女性従業員はなぜ死んだのか』を、加害者親族の手記や、黙秘権をめぐる弁護士との対話を新たに収録し文庫化。
目次
塗りつぶされた「犯行」
漫画喫茶女性従業員はなぜ死んだのか
「黙秘」と「死因不明」
「なかったこと」にされた「傷害致死」
「墨塗り」の供述書に隠された「真相」
加害者を「防衛」する法と制度
被害者遺族の「事実を知る権利」VS加害者の「人権」
被害者遺族に「説明」された「事実」
法律は誰を「守る」ためにあるのか
裁判の「公開」と「知る権利」の狭間で
松原拓郎弁護士との対話
高橋正人弁護士との対話
杉本陸の手記
著者等紹介
藤井誠二[フジイセイジ]
ノンフィクションライター。1965年愛知県生まれ。ノンフィクション作品執筆以外も、ラジオのパーソナリティやテレビのコメンテーターもつとめたり、愛知淑徳大学非常勤講師として「ノンフィクション論」等を担当(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ねお
19
法律家、特に刑事弁護人からすれば、当然最も重要な権利としての黙秘権が、社会、特に被害者遺族からどのように見えているかを詳らかにする。筆者に好感が持てたのは、往々にして黙秘権それ自体に対する批判がある中、黙秘権の必要性・重要性を前提に、理論の裏で起きてしまう現実を伝えようとしていること。特に文庫版では、単行本で受けた批判について刑事弁護人と被害者代理人弁護士との対話を通じて吟味しており、考えさせられる。ラングバインの研究によれば、そもそも黙秘権は弁護人による防御が可能になった歴史とともに生まれてきた。2021/07/17
くらーく
3
途中から、気分が悪くなって飛ばしながら。ま、法治国家だし、法律の解釈上、違法でなければ、何でも使うと言うのは分かる。。。。けど。人としての倫理、品格なんかは、どこに行くのかなあ、と。 あと、こういう洗脳されやすいタイプは、どうしたら良いのだろうねえ。被害者の気持ちはもう分からないけど、遺族はいたたまれないだろうなあ。 加害者(死体遺棄の)が、亡くなる直前で後悔の念にかられて、殺しました、と言っても時効だし、何も残らないな。本人は、それで肩の荷を下ろして亡くなる。。。なんて予想も出来るけどな。2021/08/21
かみーゆ
2
巻末の弁護士さんとの対談含め、いろいろ勉強になりました。心情的には藤井さん側だけど、反論してる弁護士さん達の言わんとすることもわかるし。犯人の人権も守らないとだし。でも反論してる弁護士さん達は、この事件の被告弁護人の立場だったら同じように黙秘させるのかな。それは全然別の問題なんだろうけど、そうじゃないなら「この事件における黙秘権の使い方はどうかと思うけど」くらい言ってくれてもいいのにね。冤罪出したくないのはわかるけど、名張毒ぶどう酒事件とか再審請求棄却してる法曹界って歪んでるなあとは思います。2021/08/26