内容説明
貧しい家庭で育った南口キクノは5歳で母親を亡くし、父親は見知らぬ女と蒸発。過酷な丁稚奉公時代を経て、19歳になると知人に誘われ役者の道へ。やがて浪花千栄子として女優になり人気役者と結ばれるが、裏切られ離婚。苦悩の末に死を考える。しかし、それでも負けず人々から“大阪のお母さん”として愛され続けた波瀾万丈の生涯を辿る。
著者等紹介
葉山由季[ハヤマユキ]
1955年東京都生まれ。跡見学園短期大学卒業。93年「ほくろ」で第27回北日本文学賞選奨。同年「二階」で第11回大阪女性文芸賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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aika
40
苦労、という一言では到底表せないほどの壮絶な経験の全てを名芝居の糧とした「大阪のお母さん」こと浪花千栄子さん。彼女の絶対に負けない生き方が、今日最終回を迎えた朝ドラおちょやんの主人公・千代と重なって涙で滲みました。幼くして母に先立たれ、父から追い出された少女の奉公先での苦節には胸が痛みます。やがて映画や舞台に出る女優になるも鳴かず飛ばず。二代目渋谷天外と結婚し尽くし抜くも、夫に裏切られ…耐え難い屈辱を受け続けながら揺るがない意志の強さで大女優となり、悲劇を喜劇へ転じさせた彼女の生涯に、パワーをもらえます。2021/05/14
るい
38
「負けへんで」小さな体で何度打ちのめされても逆境に立ち向かい続ける強さはどこからくるのだろう。 その姿に太く清らかな芯が一本通っているのが見えるみたい。 浪花千栄子さん、心身ともにとてもきれいな人。最後まで粋で凛として努力を惜しまず周りを慈しむ心のまま、私もそうありたいと改めて思うのでした。 私が昭和に惹かれるのはそういうところもあるのかな。明暗のくっきりした時代。闇はどこまでも濃く、光は眩しくてよく見えない。自由はないように感じるのにその気になれば何でも出来るような。2021/05/28
Walhalla
27
浪花千栄子さんの生涯を描いた作品です。主に昭和初期から中期にかけて、女優としてご活躍されたそうです。NHK朝の連続テレビ小説『おちょやん』の主人公のモデルとなった人ですね。ちょうど、放送開始日に合わせて発売されたようですが、ドラマとはやや異なる部分もあって、色々な角度からそれらを知ることが出来ました。2024/03/21
ごへいもち
21
自伝「水のように」のインパクトが強くて二番煎じに。どちらにしても大変な苦労。他の人は皆さっさと辞めたそうだから勤め先、ハズレ過ぎ。。私の祖父も商家(私が生まれるずっと前に廃業)、忙しくてお昼ご飯を作る余裕は無くいつも天丼とかの店屋物だったけれど使用人も分け隔てなく食べていたと祖母が話していたのを思い出す。多分それが普通2021/12/26
バニラ風味
20
朝ドラ「おちょやん」のモデのルとなった、浪花千栄子さんの物語。朝ドラはだいぶ違うな、と思ったけれど、どちらも苦労してるわ、と思った。夫の天外に裏切られ、それでも別れる前に、苦悩しつつも、最後のお芝居をするところが、いじらしかったです。また、養女にした輝美に、自分が死んだら、すぐ…」と頼んだ内容に、びっくり。だからこそ、輝美は亡くなった千栄子に、慌てず冷静に、化粧することができました。訪れたみんなが、「生きているように美しい」と驚き、悲しんだラストが心に残ります。2021/05/03