内容説明
「知の巨人」20年の集大成、圧巻の書評集。
目次
第1部 「知」を試みる(「両義的」思考法の有効性『知覚の現象学』メルロー=ポンティ;立って読む本思わず緊張、哲学の冒険『「聴く」ことの力』鷲田清一 ほか)
第2部 文学を旅する(能が現代劇だった最後の時代『能に憑かれた権力者』天野文雄;文化に「中心」があった時代『ロードショーが150円だった頃』川本三郎 ほか)
第3部 現代社会の深淵(キリスト教がもたらした文明史的な革命『カトリックの文化誌』谷泰;時代の完結性をつくる“感性”の力『感性の歴史』L・フェーヴル他 ほか)
第4部 作家たちへの追憶(散文の根底にも「対談する精神」司馬遼太郎の姿勢;平明な風景『菜の花の沖』を読む『菜の花の沖』司馬遼太郎 ほか)
著者等紹介
山崎正和[ヤマザキマサカズ]
1934年京都府生まれ。京都大学文学部哲学科卒業。同大学院美学美術史学専攻博士課程修了。関西大学教授、米コロンビア大学客員教授、大阪大学教授、東亜大学学長などを歴任。大阪大学名誉教授。紫綬褒章ならびに日本芸術院賞・恩賜賞受賞。文化功労者。日本芸術院会員。著書に『世阿弥』(岸田國士戯曲賞)、『鴎外闘う家長』(読売文学賞)、『病みあがりのアメリカ』(毎日出版文化賞)、『柔らかい個人主義の誕生』(吉野作造賞)など多数ある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
136
稀代の読書家で批評家の山崎さんが、さまざまな新聞やメディアに書かれた書評などを集めたものです。本を蓄積すべきであると最初のほうに言われていて、私も実際そのように感じます。ただ私の場合は脅迫観念で読んでいるような気がします。この中に取り上げられた本は新刊ばかりではなく、かなり昔の本もあります。また読みたい本が増えそうな気がしています。2016/03/05
ころこ
40
主に新聞に載せた晩年の書評集。実証的で専門的に細分化された知に対して、絶滅危惧種となった総合的な知の代表的な人物による文章。取り上げられている本や人物を知らないなりに読むことが出来ないと、こういう本は読めない。新聞で読んだ高齢者は本書を読まず、レビューの少なさから現役の読者を失ったことが窺い知れる。今のアカデミズム作法からはこういった文章は嫌われるのだろう。でも、何となく読んだ本の記憶はうっすらと、その後も地層のどこかに留めているものだ。2022/12/19
壱萬参仟縁
22
好事家としては、愛書家と真逆な書名にユニークさを感じた。D.ベル『脱工業社会の到来』20頁~。人間をあいてに働く知的労働社会へ移行する(21頁)。J.ロールズ『正義論改訂版』61頁~。功利主義に対置する平等な分配を求める社会契約説。公正な正義。不遇な少数者の救済が正義(62頁)ならば、ODやPD問題は逆に深刻さをきわめると思われる。安冨歩『生きるための経済学』191頁~。創発を促進する方法はないが、創発を妨害する心理過程を発見、排除する方法を考えることは可能(193頁)。2015/07/14
Hiro
6
著者生前最後の書評集。見事な文章に釣られて紹介された本の多くを読んでみたくなった。他に読む本はいくらでもあるのに。書評を読むとこうなるのは分かっているのに。特に鷲田清一、五味文彦、鹿島茂、張競の各氏の本。最後の数編が追悼文にあてられ、しかも著者自身も今はもうおられない。安心して読む喜びを堪能できる著者がほんとに少なくなってしまったと、読後つくづく思う。2023/11/27