内容説明
戊辰戦争を二本松藩士として戦った父・朝河正澄。太平洋戦争へと突き進む祖国に警鐘を鳴らし続けた子・朝河貫一。現代日本の病根を朝河父子の生き様から探る、直木賞作家渾身の歴史小説。
著者等紹介
安部龍太郎[アベリュウタロウ]
1955年福岡県生まれ。1990年『血の日本史』でデビュー。2005年『天馬、翔ける』で中山義秀文学賞を、2013年『等伯』で直木賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ナイスネイチャ
153
図書館本。表題の通り、明治維新前後の旧政府軍朝河正澄とその父の生き様を死後身に染みて理解する子朝河貫一をそれぞれの視点で描いてました。孝明天皇の毒殺や薩摩藩の陰謀など今まで習った歴史認識を覆す内容でした。勉強になりました。ただもう少し結末をしっかり描いてほしかった。2015/05/25
ゆみねこ
96
この本に出会うまで朝河貫一・正澄については全く知りませんでした。幕末の二本松藩士であった父正澄の来し方を、日中戦争直前の米国イェール大学教授の息子貫一が小説という形でふりかえるという手法の一冊。維新については勝者の側からの記述や教育が圧倒的に多いと思いますが、戊辰戦争を思うと切なくて泣けてきます。貫一のアメリカでの反日感情の中での生き方や、日本を思っての提言が受け入れられなかったことなど、もっと多くの人に読んで欲しい本。2015/06/26
佳音
52
うーん(゜-゜)辛口になります。お察しいただけるとたすかります。2016/11/21
たいぱぱ
48
歴史小説が好きになって、それまで遠く離れてて接点などなかった幕末と太平洋戦争は地続きであると気付かされるようになった。見る角度によって歴史は変わるが、どの角度から見ても会津藩は不憫で仕方ない。二本松藩も同じく東北大震災の原発事故に至るまでずっと福島県は日本の歴史的傷跡を負わされてるように感じてしまう。薩長の正義はいつからか間違った方向に向かったのか?「日本が明治維新で失ったものは人を思いやる優しさ」この台詞は凄く的を得てるように思う。しかしながら、どの時代でもどんな窮地でもそれを失わない人もいる。2025/05/19
kawa
37
今月は偶然に、敗者目線で維新を扱う3作品を読了。その中で、薩摩藩邸焼き討ち事件に参加した二本松藩氏・朝河正澄を主人公に据えた本書、一番面白く、読み応えがあった。維新における、江戸市中を騒乱に陥れるための御用盗(西郷の指示だという)、孝明天皇の怪死、戊辰戦争の実態等を描く中で、明治以後の日本に、目的のためには手段を選ばない草賊(こそ泥)の性根が蔓延し、結果としてそれが満州事変や上海事変に繋がったとする。なかなか刺激的な解釈だ。2018/02/24