内容説明
南ロシアの勇猛なコサック隊長ブーリバと、二人の息子たちの情愛や、次男アンドリイと敵方ポーランド貴族の令嬢との、死を賭した恋を描く勇壮なロマン。小ロシアのロマンティックな世界を描き出した傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
星落秋風五丈原
31
老タラス・ブーリバが、宗教学校の官費生としてキエフのアカデミーにやられていた二人の息子を迎える場面から始まる。長男オスタップは、入学したその年に学校を逃げ出していた問題児だったが、自身も結構問題児だった父ブーリバに説教されて優等生に。しかし何かあると先頭に立つわけではないが、我関せずではなく必ず加わった。次男アンドリイは兄より活発で才走っていた。ある時自分を轢きかけたブノの将軍の娘と知り合い恋に落ちる。現在侵攻を受けているウクライナに生きていたコザック達の生きざまを、尊敬を集めるブーリバ一家を中心に描く。2022/04/13
松本直哉
27
ウクライナの国歌ではコサックの末裔たることを誇らかに歌い上げるが、大きな力に決して屈従せずに自由と独立のためにあくまでも戦い続けるこの物語の人物たちの血は、今の彼らの中にも流れているのだろう。東のタタールと西のポーランド、あちらを倒せばこちらが攻めてくるなかでは戦いが日常で、むしろ平和だと落ち着かなくて、戦争依存症とでも名付けたくなる。好戦的な彼らも仲間同士の友愛は温かく、大事な決断は民主的な合議によるところが印象的。一方で女性たちはまったく蚊帳の外、男くさいホモソーシャルな世界。2022/03/16
ミコヤン・グレビッチ
8
タラス・ブーリバは、みんなが「戦だ!」と盛り上がって(冷静さを欠いて)いるときには勇猛果敢なリーダーだが、そもそもは息子に経験を積ませたい一心で不要な戦争を始め、最終的には仲間を全滅させた典型的なダメ指揮官。最後も「待ってくれ、パイプを落とした」という間抜けな理由で敵に捕まる。悲劇的な冒険活劇であると同時に、ブーリバ隊長やコサックたちの「理性に勝る行き過ぎた男気」が、否定も肯定もせずにあぶり出されている。二人の息子の性格の違いと命運、神出鬼没の老獪なユダヤ商人なども、非現実的だがうまく描かれていて面白い。2021/06/03
フジコ
7
終始コサック、そして戦争でした。舞台はロシア、ポーランド、ウクライナなどの大陸で、島国の日本とは掛け離れた異文化のお話。史実やストーリーといった大枠以外にも、ロシア文学ならではの言葉の表現や比喩が大変独特で、違和感ながらも新鮮でした。人道という考え方の無い時代。容赦なしの残虐性に言葉が出ません。憎しみや怒りの復讐は、負の連鎖として繰り返されるばかりで、全く終わりがみえません。殺し合い、何の為の信仰なのか。コサックの気迫、情熱、抜群に鍛え抜かれた運動神経、プライド、愛国心。すごい迫力で、切ないお話でした。2014/05/12
greeneggs
5
勇猛なコサックの小説。現在のウクライナ情勢をふまえて読むと考えさせられる。2022/03/30
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- 和書
- ベーチェット病