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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
trazom
118
素晴らしい本だ。パーキンソン病のお母様のケアを通じて、著者が巡らす深い思索に胸がいっぱいになる。自己責任を強調する「正義の倫理」と全く異なる「ケアの倫理」。介護を通じて、改めて、母のこれまでの深い愛情や自分の傲慢さに気づいた著者。手が震えて弁当がうまく食べられない母に「お母さん、なんであやまるん。私が小さい時、お母さん時間かけて食べさせてくれたやん」と言える著者の心映えに目頭が熱くなる。祖母や父の思い出、お母様のケアの実態を語りながら、英文学者である著者が読み解く古今の名作の解説も見事。本当にいい本だ。2026/01/13
ネギっ子gen
80
【ケアは「現在」起きていることへの注視であり、その「現在」や「今ここ」を犠牲にしないことだ】文学を通じて「ケア」を語ってきた著者が、パーキンソン病と診断された母に導かれ到達した新ケア論を綴る書。巻末に注。「あとがき」で、<常識も非常識も全部ひっくるめて、できることをやってみようの精神。/先達のおかげで、わたしも世間の声ではなく母の声にじっと耳を傾けることができたのかもしれない。母は、「ノマド」になった。わたしたちはその遊牧の民である母に付き従い、行けるところまで行こうとする、迷える必殺ケア人である>と。⇒2026/06/02
どんぐり
67
「和歌山での手の振戦に悩み始めた母が、東京のサービス付きマンションに移り住むまで、気づけばもう七年」というケア・フォーとケア・アバウトの記録。パーキンソン病で身体が刻々と変化するなか、その変化に合わせて物語を語り、その経験を共有し合う姿が丁寧に描かれる。親子の親密さと、ケアに関する膨大な文献を引用しながらの思索が交錯する。著者の研究者としての書きっぷりが前面に出る分、読み手としてはいまひとつ嗜好が合わず、距離を残したまま読み終える。 2026/08/07
けんとまん1007
58
「ケア・フォー」と「ケア・アバウト」の考え方に、ドキリとするものがある。なるほど、何となく考えていて漠然としたままであったものが、クリアになったように思う。「ケア」の2文字は、その範囲は、いくらでも広がると思う。福祉という視点だけでなく、人の生き方・哲学そのものかもしれないと思う。それを表現することとして「ゆっくり歩く」の言葉がある。単に、ゆっくりと歩くという形式的なことではないものがある。お互いの関係性や、思考・価値観にもなる。2026/07/02
とよぽん
54
小川公代さん初読み。英文学者。お母さまの介護をすることによってコスパ・タイパを行動基準に立ち働いてきたそれまでの生活を変えざるを得なくなり・・・。ケアに二通りあるというのが強く印象に残った。「ケア・フォー」は直接的で具体的な行為によって世話をすること。「ケア・アバウト」は気にかけているという意味で、身体を介在させずともお金や第三者によってケアする。小川さんは、ケア・アバウトになりがちであったのを、お母さんの訴えによってケア・フォーに重心を移していく。その過程での気づきやエピソードが素晴らしいと思った。2025/12/23




