感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ネギっ子gen
74
【これまで生きてこられたのは、老人介護のおかげです。ケアしている僕がケアされている】あの「宅老所よりあい」代表が、「シリーズ・ケアをひらく」で、自由と不自由が絡み合った不思議な話を綴る。「はじめに」で、<本書は個人の実感と主観に満ちており、そこから生じた考えで成り立っています。よって、明日からの介護にすぐ役立つことはありません。エビデンス重視の時代と逆行する本だと思います。けれど、よく分からないことに、分からぬまま付き合い続ける実践があってもよいと思うのです>と。効率至上主義の介護なんて、真っ平御免だ!⇒2023/10/22
こばまり
51
好シリーズからまたもや名著が誕生だ。介護者と老人、それぞれが内包しているさまざまな「わたし」がチャネリングし合い、ぴたりとハマった時の快のみならずズレた時の妙が、豊かなひとときを生み出す。一体全体医学書院は、私の目から何枚の鱗を落とせば気が済むのか。2022/12/23
タルシル📖ヨムノスキー
25
村瀬さんといえば「よりそう介護」の第一人者。でもこの「よりそう」ということは現在国が提唱している「科学的介護」とは相反すると私は考えている。そんな村瀬さんが医学の専門書を出版する医学書院からどんな本を出すのか気になって手に取ってみました。読了後の感想は「村瀬さんはやっぱり村瀬さんだった」。これまでの著書と違っている点があるとすれば、それはより寄り沿い度がアップし、「シンクロ」という境地に達していること。徘徊老人を無理やり施設に閉じ込めるのではなく、地域でゆるいネットワークを構築し見守るというのがすごい。2024/04/02
まさこ
21
2人の体と思いがシンクロしたときに生まれる自由。印象に残る場面■近所の人が”たまたま手助けする”しくみをつくる。たまたま、が大事と互いに分かっている。こんなあたたかな地域が実感できたら日々がうれしくなるだろう■なんとか溜まっていたものを出そうと皆でがんばるところ■新人さんの申し送りをみなで聴くところ■何度も何度も繰り返しておじいさんが、おばあさんが、とうとう受け入れたかなというところーーー効率と介護は最も遠いところにある。制度に載らないから寄り添う日々は経済と別のところで動かざるを得ない。理解を。2024/09/15
びぃごろ
20
福岡県の特別養護老人ホームの統括所長、村瀬さんのエッセイに近い本書。まるで自宅で介護をしている人みたいだ。仕事としての効率的な介護ではなく、お年寄りの実感に自分の実感をシンクロさせる。シンクロできなくてもそこからお互いにケアしあう状況が生まれる。あくせくしない時間や記憶に縛られない空間に身を委ねると逆にケアされていることに気が付くという。それを近隣の人たちと共有できた社会なら安心で幸せだ。人の体を「さわる」ことから始まる介護。自分も相手も決して喜んでいるわけではない。お互い「仕方ない」と合意して始まる。2023/05/08