出版社内容情報
「日常を支える人々」に捧げるアメイジングな思考!
生ハムメロンはなぜ美味しいのか? 対話という行為がなぜ破天荒なのか?――私たちの「現実」は、既にあるものの組み合わせではなく、外部からやってくるものによってギリギリ実現されている。だから日々の生活は、何かを為すためのスタート地点ではない。それこそが奇跡的な達成であり、体を張って実現すべきものなんだ! ケアという「小さき行為」の奥底に眠る過激な思想を、素手で取り出してみせる郡司氏。その圧倒的に優しい知性。
*「ケアをひらく」は株式会社医学書院の登録商標です。
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本屋のカガヤの本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アナーキー靴下
74
自分の体験の引き出しをひっくり返してもかけらも見つからない、ないないエピソードの数々を、きわめて論理的に分析した内容である。ぶっ飛んだ話の面白さに対して、かなり専門的に、人間の思考ルーチンを細部まで分解している。その試みは「やってくる」外部を明文化し、人間を造物主の存在まで押し上げるもののように見える。AI構築やビッグデータ解析など、人間が意識せず行っている処理をつまびらかにすることで発展し得る分野に携わる人にとっては、有益で重要な話なように思う。一般人である私にとっては役立ち感はないものの非常に刺激的。2021/06/13
booklight
35
例えば陰謀論。社会は考えられて作られている。しかし自分の生活は苦しい。ここにギャップが生じ、なにかがやってくる。影の政府だ。このように自分の感覚と世界の認識がうまくつながらなかったときそのずれを埋めるため、異形のものがやってくる。普段でもゲシュタルト崩壊やデジャヴのように体験するし、離人症などの病もある。このような仕組みは知覚できないものを取り込む仕組みでもある。ものは地面に落ちるのではなく、お互いに引き合うのだ、などもやってきたのだろう。奇妙な読みやすさと不気味な絵によって、オカルトを読むような認識論2024/10/05
かさお
30
オカルト的なものかと思えば違った。認識と思考には限界があり、なんだかハッと感じてわかるわかり方、突然感じる「やってくる」それを「天然知能」と本書では定義、要するにホラあれだ、お風呂に入ってリラックスしてる時に急に忘れものを思い出したりするやつ、と私なりに呑み込む。「認識」と「感じる」の齟齬、隙間にそれは「やってくる」理屈で解明できるものじゃない感覚的なものを一生懸命考察してる不思議さ。デジャヴ、怪奇現象、ずれ、隙間、ギャップ、因果関係の反転、権威も外部から「やってくる」第七書「死と私」が面白かった。2021/12/22
ばんだねいっぺい
30
これは、なかなか示唆深いメッセージ的な本だ。もともと、支離滅裂で、ちぐはぐな我々の感覚・記憶・無意識。それらを矛盾も含めて統合していく時に生ずる「スキマ」は、仕掛けであり、そこへ「笑神様」が降臨する。人生を豊かにする方法でもありそうだ。一見、わかりにくいが、とても面白い。2021/05/24
ネムル
24
噂にたがわず変な本だ。ひとまず「わかる」を撹乱するホラー/ミステリ小説論とも、ズレをめぐるお笑い論とも他者論とも読むだけでもいいのだが、これが幽霊の正体を幽霊かつ/または枯れ尾花と共存させる試みでさえある。著者の特異すぎる実体験を、とりあえず自分なりの「わかる」言語へと置換して読みはしたのだが、それが勝手な忖度でないかと疑うと、どうにも心許なくなる。が、その心許ない溝をこそ肯定する思考こそ、帯の語を借りれば「アメイジング」なのだろう。安易にわかるとは言わぬも、刺激的な読み物だった。2020/10/28