- ホーム
- > 和書
- > 文庫
- > ティーンズ・ファンタジー
- > ティーンズ・ファンタジーその他
内容説明
火星に現れたその男は、携帯していた千年前の警察手帳と大型拳銃、そして華奢な「帰還装置」を奪われた。だが、この世を滅亡させるという「犯人」を追って、男は宇宙軍基地を脱走。味方にした女性情報部員と首都に向かう。やがて、男の予想だにしなかった「正義」と「帰還」の形が、その様相を現してくる。言葉、機械、そして世界。高評の神林ワールドにさらなる感動の新境地を拓く、SF傑作。
著者等紹介
神林長平[カンバヤシチョウヘイ]
1953年、新潟市生まれ。SF作家。79年、早川書房・第5回ハヤカワSFコンテスト佳作入選「狐と踊れ」でデビュー。95年、人間と言葉との関係を描いた連作集『言壷』で、第16回日本SF大賞受賞。SFファンの投票によって選ばれる年間ベストSF「星雲賞」を、短編「言葉使い師」他、長編『戦闘妖精・雪風』『グッドラック』『敵は海賊・海賊版』『プリズム』等で、あわせて7回受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
H2A
15
ボルターという犯罪者を追って火星にたどり着いた永久追跡刑事という設定。刑事と、その意図を探る情報分析者どうしの延々続く解釈の連鎖。設定だけなら、いかにもなSFだが、やはり二転三転する事実の突き崩しに幻惑され、終わってみれば、恋愛ものと知的揺さぶりとがごった煮になったハードボイルドだった。わたしはその不安定な現実を巡って虚しく続くチームの議論とロジックの転倒、アクロバットな情報操作ぶりに感心。神林ワールドというのは、こういう居心地悪さをむしろ楽しめるかが全てではないだろうか。2016/11/16
おぎにゃん
6
リンガフランカーが、ボルダーが、マグザットが、物語世界の住人の記憶を、記録を、自由自在に改変する。そんな世界で必死に戦うケイ・ミンが最後に得たものは、本当に「真実」だったのか、それとも「解釈」に過ぎなかったのか?…深く考えるほどに、頭がクラクラしてきて、答えがわからなくなる。何度も繰り返される「事実は解釈から生まれるのだ」と言うフレーズのせいに違いない。だが、このクラクラ感覚こそが「センス・オブ・ワンダー」なんだろうと思う。名作である。2014/03/15
卯月
4
再読。小型宇宙機にて冬眠状態で火星に現れた謎の男・小鴨蓮角と、覚醒した彼を尋問する戦略情報局の女ケイ・ミン。神めいた敵が相手でも、情報局の面々は有能だ。事実は解釈によって成り立つ。情報局は事実を改変せず、編集する。相手が繰り出す言葉を聞くだけで自分の存在基盤が崩れていくような感覚は、さすが神林作品。だが(少なくとも私が読んだ範囲の)神林作品には珍しい、大人の直球ラブストーリー。幼少時に蓮角を捨てて出て行った母への思慕は、それから何年経っていようと切ない。ケイの飼い猫サヴァニンとの関係も。猫好きは読むべし。2012/12/16
ゆーいちろー
2
ずいぶん久しぶりの再読に、内容は全く覚えていなかったのだが、こんなにも派手な物語だったかと少し驚く。前半、いかにも作者らしいこの世界の虚構性を軸とした観念的な世界観を提出しつつ、基地脱出あたりからは、アクションかつ蓮角とケイ・ミンのロマンスが現れ、最後にはオーキー・タスクフォースを中心にした、戦略情報局一丸となった大諜報、工作戦へとなだれこむ。最終盤、真のボルタ―は誰だ的な、心理戦もわずかにあったりして…娯楽性と神林世界観がこれほど相性よくおさまっている作品は珍しいのでは?隠れた神林作品の名品と思う。2013/08/22
daken
1
構成などでもって、もっとトリッキーに読者を幻惑することもできたはずだけど、それをせずに、むしろ後半にいくにつれて、理性や思弁から感情や肉体といったものに主題が移っていく。フィクションのふりをして、実はメタフィクションだったというのは定石だけれど、この作品はメタフィクションかと思わせておいて実にストレートな小説であるという仕様。好きですよ、とても。2012/08/01
-
- 和書
- 本と暮らせば 草思社文庫




