感想・レビュー
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紙狸
18
1980年に刊行。89年に講談社学術文庫入り。80年版を再読した。戦中の日本で盛んだった「近代の超克」議論を分析する。著者はマルクス主義者だが、「近代の超克」を正面からとりあげる。「近代の超克」論議の中で、「”理論”の名に値しうべき殆ど唯一のもの」として”京都学派の歴史哲学”を名指しし、その担い手だった高坂正顯らの議論を詳しく紹介する。西欧における近代の行き詰まりの構図の剔抉は優れていた。だが超克の実践論は精彩を欠く。天皇制をどうすべきなのか、という問題が桎梏になっていたからだ。2024/08/17