内容説明
イギリスの十二歳の少女チャーリーは、母が木でつくられた古い犬のおもちゃ「リトル・マンフレート」をとても大切にしているのをふしぎに思っていた。チャーリーの疑問は、一九六六年、イギリスへサッカーのワールドカップを見に来たドイツ人と出会ったことで、明らかになる。戦争の悲劇と友情の記憶が、長い時をへて次代の子どもたちに語られる。切ないほどにあたたかな物語。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぶんこ
58
モーパーゴの戦争物語でのイギリスを舞台にした作品は「戦火の馬」「月にハミング」に続いて3作目。日本の捕虜がシベリアで終戦後何年も肉体労働をさせられてのは知っていましたが、ソ連だからこそと思っていました。まさかイギリスでも同じ事があったとは驚きました。月にハミングでイギリスに対する認識が若干変わったのですが、一筋縄ではいかない国なのだと実感。だからこそと多くの国を支配下におけたのでしょう。そんな中でも市井の人レベルでは、敵味方ない温かい交流があったというお話でした。最後のサッカーの話だけは違和感。2016/11/11
BlueBerry
48
青少年読書感想文全国コンクール課題図書。反戦のお話ですね。子供には分かりやすくて良い本だろうと思います。2014/04/12
けんとまん1007
40
人はわかりあえるものだという希望の物語。時を超え、人の思いはつながっていくいものだと思うし、それが、奇跡にもつながる。奇跡は、そこにいたる何がしかのことがあるから奇跡にもなるし、ある意味、必然なのかもしれない。友というものの存在の大きさ。人という字の成り立ちにも思いを馳せる。手作りのおもちゃの犬・・それは、手作りだからこそ、込められたものが時を超え伝わる。2016/02/07
とよぽん
35
マイケル・モーパーゴの児童書。原題は「LITTLE MANFRED」(リトル・マンフレート)だ。このままではダメなのか? 邦題はいかにも子供向けの感じがする。第二次世界大戦中の、イギリス海軍とドイツ海軍の戦闘、国を超えた友情と隣人愛など、内容は難しい。絵と訳文のおかげで、多少分かりやすくなっているけれど。ドイツに帰る前日、マンフレートに起きた悲劇は、耐えがたい悲しみだった。2019/04/22
shiho♪
21
過去に何度も課題図書になっているモーパーゴ。後れ馳せながら、この作品が初読みでした。 戦争と今をつなぐおもちゃの犬、リトル・マンフレート。そのおもちゃが作られたドイツ人捕虜のエピソードや今まで大事にしてきた母グレースの想い。戦争で芽生えた隣人愛とはいえ、それを差し引いても戦争とは辛さ悲しさがずっと消えずに残るものなのだと想い知らされる。 戦後75年が過ぎ、当時の話をしてくれる方はほとんどいなくなってしまった。これからはリトル・マンフレートのように戦争遺品が語るエピソードに耳を傾けなければならない。2021/05/31