出版社内容情報
「わたしは十円玉」。パン屋さんから若い夫婦の家、喫茶店、銭湯、焼き芋屋さん……。十円玉が手から手へ渡りながら、人間の生活のささやかな幸せのひとときをのぞいていく絵本。暮らしのたのしみを題材にした文章でも知られている画家・牧野伊三夫が、昭和39年製造の十円硬貨の視点で、日本人のなんでもない日常をあたたかく描く。いろんな人の手に渡っていく硬貨の宿命と、時代の移り変わりに想像力を刺激される。
著者等紹介
牧野伊三夫[マキノイサオ]
1964年福岡県北九州市生まれ。多摩美術大学卒業。画家。美術同人誌「四月と十月」同人。全国各地のギャラリーで個展を行い作品を発表。食や旅、銭湯など、暮らしのたのしみを題材にした著述でも知られている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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シナモン
116
次々といろいろな人の手を旅する十円玉。そこに見える暮らしの温かさ。キャッシュレス化が進んで、こんな小銭でのやり取りも懐かしく思える日がくるのかな。独特の味のあるちょっと暗めな絵も雰囲気あって引き込まれました。2021/12/02
吉田あや
76
パン屋のレジからおつりとして男の人の手に渡るところから始まる旅する十円玉のお話。鞄の中で揺られながら丘の上を走る列車を眺め、喫茶店で詩集を読む奥さんを眺めながら音楽を楽しみ、銭湯で番台のおばあさんの手に渡り、おばあさんから焼き芋屋さんへ。ほかほかの焼き芋が金色に湯気を立てる光景と空に浮かんだまあるい月が柔らかに重なる夜にギター弾きのケースに入り、上着のポケットで眠る。人の営みの幸せな循環を力強く伸びやかに描く牧野さんの線の全てが心地よく、ささやかな日常に滲む日溜まりのような優しさに心安らいだ。2021/11/28
seacalf
43
今回の絵本は十円玉が主人公。パン屋さんから、若夫婦のカバン、レコードのある喫茶店、番台のある銭湯、焼き芋売り、釣具屋さん、流しのギター弾きへと手から手へどんどん旅をするお話。非常に味わいのある牧野伊三夫さんの絵が心に残る。今は接触を極力控える時代になってしまったから、お店で小銭のやり取りをすることもめっきり減ってしまった。そのせいか、もっと十円玉を身近に感じた幼少期を思い出す。あの頃は百円なくても色々買えて満足だったんだよなあ。2021/12/08
ヒラP@ehon.gohon
25
この本における牧野伊三夫さんの絵は、太い筆で昭和の時代を懐古しているような、懐かしい香りが漂っています。 主人公は十円玉。使われて、お釣りとして別の人に渡って、いろいろな人の生活の中を渡り歩いていきます。 その、十円玉の存在感も、描かれている風景も、昭和時代を走馬燈の様に映し出しています。 現金が現金として、十円玉がこれだけ活躍できた時代を、思い出しました。2021/09/21
絵本専門士 おはなし会 芽ぶっく
13
パン屋のレジにいた十円玉は、様々な人に渡り旅をします。パン屋、夫婦、銭湯、焼き芋売り、焼き芋を買いに来た客、釣具屋、おじさん、流しのギターケース…まだまだ旅は続きます。ノスタルジーな大人に読んであげたい絵本です。2022/05/25
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