内容説明
混乱と狂気の下で引き起こされた日本の民族的「負の遺産」が、年老いた生存者・遺族の証言と資料によって、いま克明に解き明かされる。700余名の受難者名、受難状況の記録を収載。関東大震災70周年、「消された歴史」。
目次
はじめに 事件との出会い
地震と戒厳
事件(大島町の惨劇;王希天の殺害;神奈川県下の殺害)
事件の発覚と追及
虚々実々の日中外交
外国人労働者問題
王希天のこと
事件は生きつづける
事件の要因を考える
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
印度 洋一郎
7
関東大震災下、東京の下町葛飾区で発生した中国人労働者集団虐殺について、日本側と中国側の一次資料に当って検証した労作。朝鮮人虐殺に比べると知られていない、この出来事についての記録を初めて読んだ。著者の分析によると、元々現場では日本人労務者を使役している業者と、権利を主張して団交する中国人労働者の間に対立があり、震災をきっかけに日本人側がその解決として虐殺を行った節があるという。中国人労働者の虐殺は当然中国本国にも伝わり、外交問題になったが、日中間の交渉は結局有耶無耶になってしまったのも闇が深い。2019/06/11