内容説明
師団誘致、演習場協定、強制接収、そして動員…地域の軍事化が民衆生活を破壊する過程を、1880年代から敗戦までの静岡を対象に描く。
目次
第1章 徴兵制と地域(地域に根づきはじめた軍隊と民衆の反応;本格的対外戦争の経験と“静岡連隊”の設置)
第2章 日露戦争と地域社会(静岡歩兵第三十四連隊の出動と戦争協力態勢の組織化;戦争反対論と講和反対運動 ほか)
第3章 総力戦時代とデモクラシー状況下の軍隊と地域(第一次世界大戦と静岡俘虜収容所;デモクラシー状況下の軍と民衆 ほか)
第4章 十五年戦争下の地域部隊(満州事変の衝撃;富士裾野演習場協定の改定 ほか)
著者等紹介
荒川章二[アラカワショウジ]
1952年静岡県に生まれる。1976年早稲田大学第一文学部卒業。静岡大学教育学部を経て現在、静岡大学情報学部教授
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感想・レビュー
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八八
6
荒川章二の代表的な研究著作。それ以前の日本における軍隊研究は、政軍関係の中で軍部の台頭や軍部と外交もしくは戦争犯罪などに目が向けられてきた。しかし、荒川は地域という視点を設けて、日清、日露戦争からアジア・太平洋戦争まで地域の中で軍隊がどのような存在だったのかを静岡を事例として実証的に論じている。地域とそこに存在する軍隊が特には協力し、特には対立し、アジア・太平洋戦争によって崩れていく様を描く。日本における軍事史の研究潮流に地域という視覚を投じた著作である。2019/02/09
Mealla0v0
1
3章「総力戦時代とデモクラシー状況下の軍隊と地域」――ここで言う総力戦とはWWIのことで、デモクラシーとは大正デモクラシーのことだ。一般に、WWIは日本において総力戦だったとは思われていない。だが、筆者は「銃後を組織し、地域を戦争へ動員した」と指摘する。たしかに、そうした指摘のなかには総力戦の特質と合致するものがあるように思う。捕虜の扱いが「文明国」間のそれから「一等国」としての同上としてのそれにスライドしているのは、興味深い。そして、戦後落ち込む軍部支持を立て直すための情報戦略についても興味深く読んだ。2017/08/01