出版社内容情報
笹沢サスペンスの定番ネタの一つ〝誘拐もの〟。なかでも難易度S級の多重誘拐の傑作!有栖川有栖がセレクトするシリーズ第4弾。
内容説明
老舗百貨店・江戸幸のオーナー一族三津田家と一介のサラリーマン浜尾家から赤ん坊が誘拐される。「生命の危険はない」という電話通告のみ残して、誘拐犯は闇に消えた。そして、「百合の香りがする女」の行方を単独で追っていた浜尾家の姑がひき逃げされる。この事件を契機に、それぞれの思惑が交錯し、相互不信のドミノ倒しが始まる。難易度S級、多重誘拐の傑作登場。
著者等紹介
笹沢左保[ササザワサホ]
1930年生まれ。テレビドラマ化されて大ヒットした『木枯し紋次郎』シリーズの原作者として知られ、推理小説、サスペンス小説、時代小説、恋愛論などのエッセイ他、歴史書等も含む、380冊近くもの著書がある。2002年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
geshi
28
普通の誘拐ものとは違って一つの事件をきっかけに過去を掘り起こす方へ、サスペンスがなく悠揚たるテンポで進む異色作。旅情ミステリみたいな雰囲気もあるし、家族間の不和の空気も漂っていて、誘拐事件より被害者家族個人へと目を向けたストーリー展開。素人ゆえ捜査がデッドロックに何度も詰まりやきもきさせるし、過剰に説明がなされていて「そんなん分かってるわ」と辟易することも。調べ上げた事実が繋がる真相は納得できるものの、アイデアの割に長くしすぎてダラけてしまった印象。2022/10/16
だるま
13
笹沢氏の著作の中から有栖川さんが必読として紹介していくセレクションの4冊目。連続して誘拐事件が起こる。犯人からの身代金の要求は無く、ただ時間だけが過ぎていき、二番目の事件で子供を誘拐された母親が、矢も盾も堪らず事件の解明に乗り出す、という話。いやあ、とにかく長くて進行が遅い。新聞に連載された作品なので、予め連載期間が決まっていてそれに合わせたのだろうけど、姉妹の会話とか無駄に長くて辟易した。警察の無能さにも呆れた。意外な動機とか、感心する部分も所々あったが、これは半分のページ数で書ける作品だなあ。凡作。2022/05/11
やまだん
7
老舗デパート、江戸幸デパートの社長の孫息子が誘拐され、その後、ごく平凡な家庭である浜尾真紀の子どもが誘拐される。同一犯の犯行と思われる、この2つの事件にはつながりがあるのか。真紀は独自に捜査を行うが、何かを知っていた真紀の母が、ひき逃げにより死亡する。真紀の妹である由紀にまつわる話が長々と描かれ、やや冗長に感じるものの、真紀が共犯者の一人である女性の素性を探す部分、母の過去を知っていく展開等は、サスペンス感もある。何より、プロットの面白さを感じる。誘拐ミステリの傑作といっていいと思う(65点)。2022/12/24
UPMR
6
誘拐事件は序盤以降直接の進展はほぼなく、謎の女の行方を探る素人捜査が続くのみで、誘拐ミステリといっても身代金の受け渡し等のサスペンス展開は期待しないほうがいい。もとが新聞での連載だからか、アイデアのわりに冗長と感じた。多重誘拐の共通点はもっと早く気付けるだろう。というかこの目的なら誘拐が"多重"である必要性は薄い。警察の介入がなさすぎるのも不自然。たとえば百合の香りの女の写真があれば目撃した人相と同定できて警察の協力も得られるのにその入手すらしようとしないのは謎。詩人のモチーフはとってつけにしか見えない。2022/04/16
ふぃえ
4
有栖川有栖選 必読! Selection4。誘拐ものです。老舗百貨店オーナー一族の乳児と、一介のサラリーマン家庭の乳児が誘拐されます。ラストは、こうきたか!という感じでした。1972年のものなので、女性は結婚したら専業主婦になって、夫の言うことに従うということとか、ケータイがないこととか、いまとは違うのだけど、いまに当てはめて書き直せそうです。ただ、詩は意味がいまいち分からず、なくてもよかったような気がしました。2025/02/18