出版社内容情報
兄にかけられた容疑者の汚名をそそげ! 人気ミステリ作家・有栖川有栖が、笹沢左保作品をセレクトするシリーズ第3弾。
内容説明
白昼、銀座の交差点で女が消えた!―元恋人の奇妙な人間消失を語った翌日、食品衛生監視員の兄はマンションの屋上から転落死した。同じ建物内では調査中の人物が毒殺されており、兄に疑惑が。職を辞した父と共に毒殺事件の調査に乗りだす娘の行く手には“消えた女”の影が。切れ味鋭いサスペンスに家族再生の人間ドラマを融合させた、ヒューマニズム溢れる佳作。
著者等紹介
笹沢左保[ササザワサホ]
1930年生まれ。1960年、初長篇『招かれざる客』が第5回江戸川乱歩賞候補次席となり、本格的な小説家デビュー。1961年『人喰い』で第14回日本探偵作家クラブ賞を受賞。2002年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
だるま
12
笹沢氏の著作の中から、あまり知られていない本格ミステリを有栖川さんが厳選して紹介していくシリーズの第3弾。今作はある平凡な家族に起こった悲劇。長男が人を殺して自殺したと結論付けられた事件を、長男の無実を信じる父と妹が真実を求めて遁走する物語。サスペンスと謳ってあるが、あまりそういう感じはしなかった。長男が死ぬ前日に、交差点で知り合いの女性が目の前から突然消えたと家族に話した事から、その女性が事件に関わりがあると父娘が推測していくのだが、その消失の謎の解明が呆気なくてガッカリ。何か、全体的にイマイチだなあ。2022/03/10
コチ吉
9
人間消失の謎には一応合理的な解決が示されているが、ちょっと苦しいような気もする。アリバイ崩しとしても特筆するものもない。有栖川さんの特選とのことだが、余程この作家に思い入れがあるのだろう。2022/03/09
ふぃえ
6
有栖川有栖選 必読! Selection3。殺人を犯し、自死したとされる男性の、父親と妹が真相を解明するお話です。真犯人と人間関係などはなるほどと納得できるけれど、銀座の交差点での人間消失の謎は、ホントにそんなふうになるのかな?と半信半疑でした。あと、この時代(1963年)の女性って、こんなに積極的だったのかと驚きました。ある日突然何気ない日常が崩れてしまうのは、誰の身にも起こり得ること。毎日を感謝して送りたいです。2024/12/04
やまだん
6
白昼、銀座の交差点で女が消える。この体験をした小山田晴光という男が、マンションの屋上から転落死する。晴光は食品衛生監視員であり、調査していた人物が、飛び降りたマンション内で殺害されていた。。晴光が犯人でないと信じる妹は、晴光の先輩でもあり、古くからの知人でもある瀬田という男と一緒に、晴光が目撃した久米緋紗江という女性のアリバイの調査のため、九州に向かう。晴光の家族の様子がたっぷりと描かれてるなど、本格ミステリ的要素は薄く、有栖川有栖が絶賛するほどの面白さまでは感じられなかった。そこそこのデキ(60点)2022/12/17
しゅー
5
★★「木枯し紋次郎」で有名な著者を、私は宮本武蔵の連作短編で知った。ミステリ作家として高名とも知ってはいたが、多作ゆえ何から読んで良いのか分からない。そこに徳間文庫のこの企画が始まったので助かる。謎の死をとげた長男が殺人事件の加害者と疑われてしまった家族。父と妹は、それぞれに事件の謎を追う。「人間消失」の謎が“掴み”だが、大技が決まるというよりもすべての伏線がつながる気持ちよさと家族のドラマが読みどころだ。今となっては昭和の風俗と価値観が「異世界モノ」レベルで違和感あるのだが、父親の人物像が魅力的だった。2022/04/19