出版社内容情報
有栖川有栖さんが、笹沢作品をセレクトする第2弾。空前絶後の〝不在証明〟。笹沢ミステリ史上、一二を争う大トリックに慄け!
内容説明
通過する急行列車の窓から父親の転落死を目撃した小梶鮎子。被害者に多額の保険金が掛けられていたことから、保険調査員・新田純一は、詐取目的の殺人を疑う。鉄壁のアリバイ崩しに挑む彼をあざ笑うように第二の死が…。ヒット作・木枯し紋次郎を彷彿させるダークな主人公のキャラクター造形と、大胆極まりない空前絶後のトリック。笹沢ミステリの真髄。
著者等紹介
笹沢左保[ササザワサホ]
1930年生まれ。1960年、初長篇『招かれざる客』が第5回江戸川乱歩賞候補次席となり、本格的な小説家デビュー。1961年『人喰い』で第14回日本探偵作家クラブ賞を受賞。テレビドラマ化されて大ヒットした『木枯し紋次郎』シリーズの原作者として知られ、推理小説、サスペンス小説、時代小説、恋愛論などのエッセイ他、歴史書等も含む、380冊近くもの著書がある。2002年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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cinos
64
高校生くらいで読んでいて、どうやったのかすっかり忘れていたのでシンプルなトリックに驚きました。新田がひどすぎます。有栖川さんの解説がよかったです。2022/02/20
HANA
59
崖から墜落した男には多額の保険金が掛けられていた。ただその受取人は現場を走る列車の中からそれを目撃するという鉄壁のアリバイが…。探偵によりだんだん明らかになる事件に連なる過去も興味深いがやはり印象に残るのは第一の事件のトリック。第二の事件のトリックは簡単に推測できるけど、第一の方は本当にわからず解き明かされた時は私の大好きなトリックで狂喜乱舞。トリック自体は解説にある様に他に書いている名高い作家も二人いるけど、それが書かれた両方の作品とも大好きなのです。現在の眼から見ると難点も目につくけど、それでも満足。2024/04/15
えみ
55
どこか懐かしさを感じさせるサスペンス。無色透明なガラスに無数のひっかき傷をつけて曇らせてしまったように、霞んで見えなくなっていく真相をどうにかして覗こうと試行錯誤する保険調査員の新田純一が真実に辿り着くまでの話である。派手さはなく、というよりどちらかと言えば地味な事件。それなのに多額の保険金が掛けられていた父親の保険金受取人となっている美しく儚げな娘・小梶鮎子の謎めいた存在に翻弄されながら楽しく読むことができた。もしも一つでも上手くいかないことがあったらあの“自殺”はなかった。意外性が面白い小説だった!2022/07/25
koma-inu
44
有栖川セレクション2。列車の窓から、崖から落ちる父親をみた娘。他殺が疑われる中、またも崖から転落死が発生。1961年作との事ですが、文章は非常に読みやすいです。昭和の雰囲気で、島田荘司さんのような作風。殺人も、島田御大を彷彿させる、トンデモトリック、特に第1の殺人。いやいや、これはやり過ぎ!と思いつつ、哀愁ただよう文章に引き込まれて、そこまで脱力感は無かったです。初読み作家でしたが、他作も読んでみたいです。2022/02/15
geshi
33
新田の孤独とニヒルをまとったキャラ造形が後の代表作である木枯し紋次郎を思わせる。とは言えカッコいい主人公にまではなり切れておらず、何でこんなにモテるのか不思議 。アリバイの謎が中心に据えられているが、男と女の暗めな関係性のストーリーは昭和を感じる。第一の殺人のトリックがアリバイでありながら別のトリックにもなっているのは、なかなか意外な方向。第二の殺人のトリックは弱さを感じるが、伏線はさりげなくも丁寧。作品全体を覆うダークなトーンは、この動機の重さのためか・2022/03/05