出版社内容情報
江戸琳派の世界!名工原羊遊斎に師事した蒔絵師・理野。美を生み出す苦悩と喜び。鈴木其一との交情を縦糸に紡ぐ美術工芸の世界。
内容説明
文政五年、蒔絵師の娘・理野は兄と共に松江から江戸の原羊遊斎の工房を目指した。兄は急逝したが、女の蒔絵師として、下絵から仕事が許される。工房の数物を作りながら新しい美を求める理野。情念を込めた独自の表現を追求し、全てを蒔絵に注ぐ。江戸琳派の酒井抱一、鈴木其一など実在の人物を絡め描かれる美術工芸の世界。やるせない恋心と職人魂、潔い女の生き方が感動を呼ぶ。
著者等紹介
乙川優三郎[オトカワユウザブロウ]
1953年東京都生まれ。96年「藪燕」でオール讀物新人賞を受賞しデビュー。97年『霧の橋』で時代小説大賞、2001年『五年の梅』で山本周五郎賞、02年『生きる』が直木三十五賞、04年『武家用心集』で中山義秀文学賞、13年、初の現代小説『脊梁山脈』で大佛次郎賞を受賞。16年『太陽は気を失う』で芸術選奨文部科学大臣賞、17年『ロゴスの市』で島清恋愛文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
46
面白かったです。日本美術に興味があるので最後まで貪るように読みました。蒔絵師の娘・理野は数物を作りながら、新たな美を求めていくのですね。独自の美を追求する姿が印象的でした。それにしても男性作家なのに、女性の想いが見事に紡がれているののは驚きです。2023/03/19
Y.yamabuki
18
理野の住む根岸、時折訪れる不忍池や向島が美しい筆致で情緒深く描かれる一方、彼女の蒔絵師と女の間で揺れ動く心の裏、独自の表現と工房のやり方の狭間での葛藤というテーマは、現代的で以前読んだ著者の「ロゴスの市」を思い出した。理野は胡蝶の生き方に刺激を受ける一方、蒔絵師の祐吉や絵師の其一とは互いの作品での繋がりながら相手に男を思う。その心の機微が見事に写し出されている。潔く決断し、新たな境地を開いていく理野の姿は凛々しく清々しいラストだった。主人公の理野以外は実在で中でも鈴木其一は作中で重要な役割を担う。続く→2022/03/22
鈴木 千春
5
兄と共に江戸へ到着するも、兄の急死で自身が蒔絵師になる。 男の中でひとり蒔絵への情熱に日々暮す理野。 江戸琳派の酒井抱一、鈴木其一など実在の人物を絡め描かれる美術工芸の世界。 残念な読み方をしてしまった。 寝ながら読みはじめた為に、調べないで読み飛ばしてしまった。 主人公の理野の年齢が判らず、想定できない状態で読み進めた。 蒔絵の工程や職能もイキナリ出てきて、その職人達との技能的なやり取りになる。 読み難い事、この上ない! が、読後に、検索かければ本物の作品が出てくる。 再読時はちゃんと調べながら読もう!2022/10/16
gigi
3
江戸の蒔絵師の工房で働くことが許された理野は、美を追求し、絵師とも交流を持ち切磋琢磨してゆきます。 長い様にも思えるお話ですが、関わる人々が生き生きと描かれ、緊張感があって、最後まで興味を持って読みました 江戸琳派の酒井抱一、鈴木其一の絵の背景や人となりが描かれていて、ただ絵が上手い人じゃなくて、人生があったんだな〜って、身近に感じました。 乙川氏の本は、人を描くのが巧みで、男性だけではなく、女性の心情が何故そこまで描けるのか。。。良い本だと思いました。2022/10/07
スターリーナイト
1
2023-312023/04/20