出版社内容情報
読む人全ての魂を鷲掴みにする一途な愛の軌跡。<トクマの特選!>第一回配本。
内容説明
異人館が立ち並ぶ神戸ジェームス山に、一人暮らす謎の中国人美女・李蘭。左腕を失った彼女の過去を知るものは誰もいない。横浜から流れ着いた訳あり青年・八坂葉介の想いが、次第に氷の心を溶かしていく。戦後次々に封切られた映画への熱い愛着で繋がれた二人は、李蘭の館で静かに愛を育む。が、悲運はなおも彼女を離さなかった…。読む人全ての魂を鷲掴みにする一途な愛の軌跡。
著者等紹介
樋口修吉[ヒグチシュウキチ]
1938年福岡県生まれ。慶應義塾大学文学部・同法学部を卒業。三井物産勤務の後、ヨーロッパ・南米などを放浪。81年『ジェームス山の李蘭』で第36回小説現代新人賞を受賞し文筆活動に入る。同作は第90回直木賞候補にも挙げられる。2001年逝去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ミッフー
37
謎の中華美人の李蘭がタイトルにもなってるわけだし、当然主人公は・・えっ、なかなか李蘭が出てこない💦何事も抜かり無くスマートにやりこなすボギーのようなジゴロ葉介じゃん💦って感じの今まで読んだことないタイプの小説です。内容もゆったりと、さしたる抑揚もく、時は静かに過ぎ行きて、波乱に満ちた葉介の人生も年上妻李蘭により静かで満たされたものになり。ハードなサスペンスやアクシデントを期待する邪な僕なんかより、どちらかと言えば文学少女向けの内容かな🤔でも李蘭の愛読書、チャンドラーの長いお別れ、一度は読んでみたいなと👍 2023/07/01
そーいち
13
ジェームス山とは神戸にある洋館が立ち並ぶエリアの通称。そこに住まう意味ありげな李蘭との恋を描く小説かと思いきや李蘭が登場するのは4章から。この小説は軟派を自称するもアウトローに生きていく八坂葉介を中学時代から李蘭に出会い恋に落ちるまで描く長編のような連作短編のような佇まいの作品。ピカレスクロマンのようになっていくかと思いきや違うのは葉介の不思議な立ち位置にあるのだろう。楽しいのは3章のギャンブル編。樋口さんが後にギャンブル小説で名をはせる要因となった発端がそこにある。ヒリヒリとした空気をしばし感じられる。2023/05/22
Sakie
12
A love letter for Li Lan。李蘭に出会うまでが長い。そして人生は続いてゆく。時代はGHQの占領下、米軍人らで活気あふれる横浜、神戸。母一人子一人の不良時代から如才なく立ち回り、天涯孤独になったひとつ身を極道やらギャンブラーやらに混ざりこんでうまいこと身過ぎ世過ぎしてゆく。おっと、「鳴かずのカッコウ」ではジゴロ小説と評されていた。男娼のほう。米陸軍の大物の家に住み込んだり、クラブを経営したりするのだ、だけどハードボイルドなのか、洒落ているのか、よくわからない。幸せだったのならいいけど。2025/09/12
NICK6
8
お気に入りの偏愛作家。しばらくぶりの再読。やはり素晴らしかった。今回併読している「銀座ラプソディ」とかなりシンクロキャラがわんさか出てきて(特に極道者)、しかも小説内で相性抜群のフィットで演出させる。ソコマデヤルカの、悪ガキっぷりが、しかし、まるっきり非道&非行っぽさとは無縁で、なぜか清々しい爽やかさに満ちている。後半も、(ださく、熱血ドラマ感皆無の)妥協なき任侠と、相反する純愛がどこまでも感動的で哀切な調べで、極上極楽のリフを奏でる。お出ましキャラが最高なのは勿論だ。我が永久保存のカッコイイ不良小説。 2024/08/21
しい太
5
カバーイラストが良くて(トクマの特選!は大体良い)他は何も知らずに読んだが、プロローグで語られる「李蘭について語るには葉介のことに大半割かないと」という文言が全く嘘でなく、七割読み終えてもまだ李蘭が出てこない構成は今の感覚だと凄い勇気。葉介は少年期からたいがい無頼漢な生活なのだが心根が怖いほど誠実で、人の心を詮索しないし裏切らない。でもポーカーは強くて演技も得意。言ったらなんだけど昭和の男って感じじゃないし、李蘭もファムファタルというよりは情の深い人で、まあとにかく意外な情感のある作品だった。2024/04/16
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