出版社内容情報
移植手術、安楽死、動物愛護……“生命”の現場を舞台にしたミステリー。あなたは必ず騙される――『闇に香る嘘』を超える驚愕!
内容説明
移植手術を巡り葛藤する新米医師―「優先順位」。安楽死を乞う父を前に懊悩する家族―「詐病」。過激な動物愛護団体が突き付けたある命題―「命の天秤」。ほか、生命の現場を舞台にした衝撃の医療ミステリー。注目の江戸川乱歩賞作家が放つ渾身のどんでん返しに、あなたの涙腺は耐えられるか。最終章「究極の選択」は、最後にお読みいただくことを強くお勧めいたします。
著者等紹介
下村敦史[シモムラアツシ]
1981年京都府生まれ。2014年に『闇に香る嘘』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は数々のミステリランキングにおいて高い評価を受ける。同年に発表した短編「死は朝、羽ばたく」が第68回日本推理作家協会賞短編部門候補、『生還者』が第69回日本推理作家協会賞の長編及び連作短編集部門の候補、『黙過』が第21回大藪春彦賞候補となるなど、今注目を集める若手作家である。著書多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いこ
111
生命のやり取りの現場を舞台とする医療ミステリー。①脳死寸前の患者の臓器を狙う医師 ②元厚労省事務次官のパーキンソン病は詐病か?③「動物の命は人間の命より軽いのか?」という言葉で、養豚農家に過激な攻撃をする団体。④「人間として赦されないことでした」の一文を遺し自死した真面目な研究者。赦されないこととは? ⑤ この①~④がこの章で見事に全部繋がる。その見事さと「こんなことって本当に?」の思いに、背筋がゾクゾクする。各章の中で何度も起こるドンデン返し。そして最後の最後に起こる大ドンデン返しに驚いてほしい。2022/04/08
アッシュ姉
98
何事も線引きは悩ましいものだが、命ともなると非常に難しい問題だ。一人の命より大勢の命を救うことの方が大事なのか、助からない命より助かる見込みのある命を優先するか、動物の命より人間の命の方が重いのか。何が許され、何が許されないのか。何が正しく、何が間違っているのか。簡単には答えの出せない命の倫理について、黙過してはいけないと深く考えさせられる。短編集かと思ったら連作短編となっており、一層堪能することができて満足。2021/08/06
じいじ
96
読み終えて『黙過-知っていながら、黙って見過ごす』というタイトルの妙を実感した。医療ミステリーは難解だけど、息も吐かせぬ緊張感があって面白いので、2日間で一気に読了した。四つの独立した出来事が、最後の【究極の選択】の章で解き明かされる構成がお見事。臓器移植の裏側が赤裸裸に語られていて、医療の世界に疎い私には好奇心から面白い半面、すごい怖さを感じた。何とか読み終えたものの正直に言うと、この小説は心身ともにベストの状態で読みたかった。コロナ禍と骨折のリハビリ中の状況下では重く辛すぎる内容であった。2021/02/15
のり
95
短編集だと思いきや4つの話は序章に過ぎなかった。医療の現場は日々進歩しているが、倫理的には踏み込んでいけない境界線がある。病を治そうと研究し技術を磨く姿勢には感謝しかないが。異種移植という技術が一般的になる日も近いのか?食として命を頂く毎日。種としての差別と実験での犠牲。さらに臓器移植の難しさ。難題は多いが考えさせられた。2021/02/02
菜穂子
74
臓器移植を巡る短編はどれも秀逸で完結していた。それが最後に全て繋がりどんでん返し。臓器移植の作品を何冊か読んだ後なので、下村作品の面白さである数々の仕掛けや物語の展開、医療ミステリーとして読み応えがあった。2021/03/04