出版社内容情報
真っ白な自称人魚の男と寺で同居することになった私。いつしか奇妙な力が芽生えて…。
内容説明
故郷の寺に帰ってきた私が池で見つけたのは、自称人魚の男『うお太郎』。人魚にも見えないが、人間とも思えない不思議な生物だった。うお太郎は「この寺の周辺には奇妙な石が埋まっており、私にはそれを見つける力がある。石には記憶を忘れさせたり、幽霊を閉じ込めたりする力が宿っている。早く見つけろ」と言うのだが…。書評家熱賛!奇想小説の異端児が放つ長篇が待望の文庫化。
著者等紹介
田辺青蛙[タナベセイア]
1982年大阪府生まれ。オークランド工科大学卒業。2006年第4回ビーケーワン怪談大賞で「薫糖」が佳作となり、『てのひら怪談』に掌編が収録される。2008年『生き屏風』で、第15回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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sin
85
雨垂れに風の調べに台風に、宇宙に果てはブラックホール…妖しと思へば全ては妖怪である。人は己れの感覚器官で現象を解釈するが思い込めばそれが正解となる。ましてや夢うつつの区別が曖昧な状態にあっては現実らしい現実と云えども現実とは呼べない。傍らに妖怪のいる世界、殺しに女犯と云った人間の我欲の世界、これは坊主の夢である。そしてこれこそ自分たち読み手のうつつであり世界の隠された真実である。2020/04/21
藤月はな(灯れ松明の火)
61
楽しい思い出がある祖父母の寺へと帰った由木尾。その池底で眠っていた男は人魚と名乗る「うお太郎」だった。彼によって耳を開かされ、石の聲を聴けるようになったが、それは摩訶不思議で奇々怪々、そして甘っちょろいノスタルジーを嗤うかのような根源的な恐怖への始まりとなった。ノイズのような周囲との齟齬は伏線だったのか・・・。人の悪心や都合の良さに浸った後じゃ、妖達はまだ、恩情がある様に思えるから不思議。そしてやぐろの本心には『HoLic』での紫陽花の話を思い出した。人の条理では異様だが、妖の条理では当たり前の事だから。2024/07/11
ざるこ
45
田舎の山寺に住職となるべく越してくるユキオの日々。池の水を抜くと底に眠るまっ白い肌の男。「僕は人魚だ。」ん?ファンタジー?かと思いきや天狗も登場して昔ばなしの様相。でも事件は驚くほどグロくて吃驚。山に散らばる不思議な石と人魚うお太郎に翻弄されてユキオは夢と現を行ったり来たりしてるみたい。祖父母の秘密は住職とは思えない血生臭さ。過去の業を背負わされてるようで哀れだけど、なんかユキオも飄々としてて脱力。サスペンス調でもありいろんな要素をつまみ食い的物語。石は何かが籠もっててそうで怖いと思ってたからそこは納得。2020/06/06
ココ(coco)
30
☆ ☆ ☆田辺青蛙さん、初読みです。なんか独特の雰囲気があり、読む人を選ぶ作品だと思いました。人魚の男や天狗、不思議な石などなどが出てきて、ファンタジー溢れるホラーと言ったところが感想です。この独特の世界観は、嫌いでは無いのですが、いまいちのめり込めなかった。2020/03/10
小夜風
22
【所蔵】初読み作家さん。祖父の寺を継いだ由木尾が池の水を抜くと、池の底には人魚がいた。人魚のうお太郎と由木尾のほのぼのファンタジー…かと思いきや、最後はめちゃくちゃホラーでした!途中までは梨木香歩さんの「家守綺譚」みたいな雰囲気で、とっても面白く読みました。うお太郎は色白で眉目秀麗の美男子…らしいのですが、どうしても生臭くてぬめっとしたイメージが拭えず、某ゴラム(笑)みたいなのを想像してしまいました。天狗が出す料理が何故かとても美味しそうで、食べたら酷い目に遇うと判っていても抗える自信がありません(笑)。2020/07/07