内容説明
西軍、薩摩は西郷吉之助が戦略を立て、伊地知正治に戦術を任せた。長州は大村益次郎が戦略を立て、山県狂介に実戦を指揮させた。一方の奥羽越列藩同盟、会津の佐川官兵衛は戦場では猛将だが、戦況を変える力はない。そして土方歳三は局地戦には強い、戦略なき戦術家だった。…冒険小説を牽引してきた船戸与一が独自の史観で日本近世史に真っ向から取り組んだ渾身の巨篇。
著者等紹介
船戸与一[フナドヨイチ]
1944年山口県生まれ。作家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
1 ~ 1件/全1件
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Akihiro Nishio
27
ついに会津陥落。悲劇を表現するためには、それなりのボリュームが求められるからか、細々とした局地戦での失敗も描かれ、ため息しかでない。最後、会津にのみ非常に厳しい処分が下り、下北半島へ転封されてしまう。しかし、関ヶ原後の徳川家康に較べれば、非常に軽い処分なんじゃないかな。これで100年恨むと言うなら、長州・薩摩は260年の恨みと言えるし、お取りつぶしになった家も多数。逆に家康の恐ろしさを思った。前田哲夫なるジャーナリストの解説が格好良く、これだけでも読む価値あり。2017/10/10
きょちょ
22
戦争というものが実に悲惨なものであるかを改めて感じさせる。当然個は蔑ろにされ蹂躙される。会津を含め、制圧されたところの民(武家は自害する人が多い)はひどいものだ。これによって(実際は途中からだが)明治政府が成立するが、生き残った主だった者たちもそれぞれ数奇な運命をたどる。その後、西南、日清・日露、満州事変、太平洋戦争と続くわけだが、戦争というものはいったい何をもたらすのだろう?その延長線上に私たちが存在するのだが、実に複雑な気分。この作品より一層哀しいであろう、彼の遺作もいずれ読まねばなるまい。★★★★★2021/08/31
木賊
17
降伏直前の会津の惨状は相当なもの。戦闘の被害や西軍による凌辱も、藩士の悲壮さや指導層のどうしようもなさも。全巻通じて判官贔屓にならず、各藩の内情を描き切っていて、非常に良かった。会津(だけではないが)の士族とそれ以外の民衆の乖離という問題も興味深く、幕末の東北各藩の動向について、ちゃんと知りたいと思った。2020/07/08
ちゃま坊
16
二本松少年隊、会津白虎隊、娘士隊の悲話は婦女子による突撃攻撃だろう。太平洋戦争末期を連想させる。官軍による略奪や強姦行為は「満州国演義」の伏線となっていく。戦後も賊軍となった会津藩への処分は過酷であったようだ。歴史は敗者からの視点が欠けている場合が多い。この後明治政府は帝国主義に突き進み、日清日露、昭和の戦争へとつながっていく。2018/07/03
浦
9
会津の結末は恐ろしく残酷だ。そして、破滅に向かいながら打つ手を打てない武士たちは別に愚かなわけではなく、日本人の組織が滅びる時はいつもこうなるだろう。そう、今だって。春介とモモの結末には驚いた。作者にとって、他の作品の主人公たちと何が違ったんだろう?2019/11/15