内容説明
妖物が歌ったのは李白の「清平調詞」であり、約六十年前、玄宗皇帝の前で楊貴妃の美しさを讃えた詩であった。白居易という役人から示唆され、一連の怪事は安禄山の乱での貴妃の悲劇の死に端を発すると看破した空海は、その墓がある馬嵬駅に赴く。墓前には白居易―後の大詩人・白楽天が。彼は空海に、詩作に関する悩みを打ち明けるのだった。
著者等紹介
夢枕獏[ユメマクラバク]
1951年、神奈川県生まれ。東海大学文学部日本文学科卒業。77年、「カエルの死」で作家デビュー。『キマイラ』『闇狩り師』『サイコダイバー』『陰陽師』など、多くの人気シリーズを持つ。89年、『上弦の月を喰べる獅子』で日本SF大賞受賞。98年、『神々の山嶺』で柴田錬三郎賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
キムチ
44
1巻で舞台の骨を説明して話を起こし、2巻は承る。丹翁という人物と空海との語りが面白い。何億もの牡丹の花びらが舞うって?!荒唐無稽と気宇広大は紙一重!話が史実から宇宙レベルまで広がって行くが些か中だるみ。飛ばして読んでも筋は追える。ラスト、阿倍仲麻呂が切々と訴える玄宗と楊貴妃のくだり(やや、コミックぽいけど)で盛り上がっていく。楊貴妃と泉涌寺(ちょび髭の仏像!)徐福のエピソードも混ざる。李白の手紙はちょっと鼻白んだけど。李香蘭❓どっかで聞いたような。周明徳が自ら釜茹でで自死とは驚いた。2017/01/22
ntahima
40
予想通りと言うか、早くも空海と橘逸勢のコンビはややフェードアウトし、物語は急転、楊貴妃伝説へと流れ込む。空海物語と言うよりも空海・逸勢と言う東洋のホームズ・ワトソン(本当はE・A・ポーのオーギュスト・デュパンと名無しの「私」と言いたいが・・・古い?^^;)が狂言回しとなって唐代の長安を縦横無尽に駆け巡る伝奇絵巻か・・。さもなくば、夢獏らしく脇役がとめどもなく始めたひとり語りか。個人的な興味は空海が語り部として物語を終えるか、はたまた主人公の場に舞い戻るかである。くううかあい~(空海)、カ~ムバアッ~ク!!2010/09/04
るぴん
33
空海の脳内スケールの大きさに圧倒される。今から1000年も前に、宇宙規模で物事を考えていた人がいたなんて…!後の大詩人・白楽天や阿倍仲麻呂も登場し、長安で起こっていた様々な怪異も、全ては50年前の玄宗と楊貴妃の悲劇に繋がる。晁衡の手紙で判明した出来事にはゾッとした(゚д゚lll)。巻末の対談で写真掲載されていた空海の書も凄い。「風」の第一画の龍爪は惚れ惚れするほど恰好いいし、飛白体はまさに呪がかけられているようで迫力を感じる。物語も、空海本人も、本当に面白いなぁ。2018/05/18
エンリケ
32
唐の都で起こる怪奇な事件。その謎を追う空海の異彩は徐々に都の人々の知るところとなる。事件の黒幕がおぼろげながら見えて来た本巻。しかしその目的は不明だ。お話の中心は、嘗て帝の寵愛を受けた傾城の美女楊貴妃。どうも彼女の最期がこの事件の鍵を握っている様だ。歴史的大事件を絡めたお話は好奇心を強烈に刺激し、どうにも読む事を止められない。気がつけば500ページを越える物語をあっという間に読み終えた。特に最後の安倍仲麻呂の書簡は衝撃的。果たして楊貴妃は何処に消えたのか。待ちきれずに次巻に手を伸ばす。2018/03/19
どぶねずみ
31
空海の遣唐使としての20年もの長い留学の最中に起こった珍事件。李白の美しい詩からものがたりが始まり、楊貴妃の墓を掘り返すようなことまで? 世界史が苦手で、玄宗皇帝や楊貴妃について何も知らない私でもスラスラ読める。妖怪が出てくるファンタジー要素もあるからなのか? 史実の相関図があるとなお面白い。空海は無事に自信の夢(倭国に仏教を広めたい)を実現できるのか? 3巻へ。2018/04/09