内容説明
すべての人民が従うべき、唯一絶対の基準であるのは「法」である。基準としての法が徹底すれば国という機構が完備される。君主はその機構の頂点にあって運営につとめるだけでいい。それさえ心得ていればどんな凡庸な君主でも立派に政治を行うことができる。その法の運営の仕方を韓非子は諄々と説く。現代サラリーマン社会にも応用できる論理。
目次
二柄―ふたつの柄
備内―妻に用心せよ
孤憤―ひとり憤る
説難―進言のむずかしさ
五蠹―五種類の害虫
亡徴―亡国の兆し四十七項
和氏―玉を抱いて泣く
難―批判
十過―身を亡ぼす十種の過ち
説林―説話集
内儲説 上―臣下操縦の「七術」
内儲説 下―君主の警戒すべき「六微」
外儲説―説話集
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
isao_key
9
「逆鱗に触れる」「矛盾」など出典の元となっている『韓非子』55篇から自説を直接述べた論文体・問答体の文と、説話類を編纂した主要文を抜き出してその思想を明らかにしている。抄訳ではあるが、内容はよくまとまっている。韓非は法こそが、すべての人民が従うべき、唯一絶対の基準であるとした。解説には韓非はひとりの人間が絶対的な権力者になるには、どうすればいいかをテーマに君主に訴えかけた。その答えは法の確立であり、その運営のために徹底した人事管理をすることで君主の個人的徳に頼らぬ現代的統治が可能になると考えた、とある。2015/02/11
n yamamoto
2
紀元前3世紀はじめ中国の韓という国の王の妾の子として生まれた非氏。 「韓 非先生」って本。 現実主義で好き。 説難はじめ2000年経っても全く色あせてないんだなぁ。 待ちぼうけや矛盾の話も。2017/01/08
からくり
1
統治理論の名著。韓非子には、政治を実践する立場からの課題、解決策が書かれており、また現場のリアリティがふんだんに盛り込まれている。君主からすれば、先王の政、道徳による政治等の抽象的な儒家の説法より、富国強兵を真剣に考え、血なまぐさい政治現場を実際に見てきた韓の公子、韓非の法・術論を知りたかったのだ。だからこそ始皇帝の評価も高かったのだろう。しかし、法治では統治の正統性を担保できないのが欠点だ。この点では、韓非が馬鹿にした儒教の方が圧倒的に優れていたことに留意したい。秦が滅びた一因もまた韓非子にある。
あさとかずゆき
1
トップがマイクロマネジメントに走ってはいけない、形式至上主義は馬鹿げている、など現代にも通じる組織論2022/01/18
凸凹
1
今も昔も人が欲望によって動くことは変わらない。人を思い通り動かすにはどうすべきかが書かれている。韓非子は、2千年以上前に書かれたが、現代に通じる部分も少なくない。2013/09/25