内容説明
お松は、小杉屋の旦那に七年ぶりに抱かれて寝た。七年の歳月を経て交わる男というものは、お松にはめずらしい感触だった。刃のない刀を肌の奥に当てられているようで、男のものに鋭さがあり、初々しいのである。刀の先、刀の背は、お松の肌の奥ばかりか足の指や手の指の先までも震えさせた。―運命に翻弄され、浮き世にたゆたう女の身の哀しさ。あでやかに、華やかに男女の情炎を描く珠玉の時代連作集。
お松は、小杉屋の旦那に七年ぶりに抱かれて寝た。七年の歳月を経て交わる男というものは、お松にはめずらしい感触だった。刃のない刀を肌の奥に当てられているようで、男のものに鋭さがあり、初々しいのである。刀の先、刀の背は、お松の肌の奥ばかりか足の指や手の指の先までも震えさせた。―運命に翻弄され、浮き世にたゆたう女の身の哀しさ。あでやかに、華やかに男女の情炎を描く珠玉の時代連作集。