内容説明
父の経営するバードショップにやって来た赤い口紅の女は、僕の五官を痙攣させる魔力を持っていた。翌日、カナリヤを屋敷に届けた時、柏木園子というその美貌の人妻は、「カナリヤの鳥かごがベランダに出ている時に来て」と、僕を誘惑した。僕はそれから毎日屋敷の前をうろつき、園子との濃密なひとときに夢中になる。だが彼女の目的は他にあった…(表題作)。直木賞作家が綴る、日常の恐怖十五篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Take@磨穿鉄靴
54
小池真理子氏の短編集。というかショートショート集かな。ショートショートってかなり難しいと思うしどうしても星氏の印象が強くそれと比べると霞む印象。陸上で言えば5000をメインにやってる選手が100mや200mを走ってみた感じ。もちろん遅くは無いけどどうしてもそれメインでやってる人の記録と比べると…。ショートショートって遊びの文章が少ないし突き詰めると文体に作家の個性が消えるんだなと気付かされた。★★☆☆☆2019/07/10
佐島楓
30
15編のミステリ短篇を収録。皮肉に満ちた結末の、キレの良い作品ばかりでした。小池さんの魅力は、長編だけではなく、短編も素晴らしいところ。今後このようなテイストの作品は書いていただけないのでしょうか。2014/05/24
ぐうぐう
26
1989年に刊行された短編集の文庫版。1989年と言えば「妻の女友達」で日本推理作家協会賞の短編部門を受賞した年なので、小池真理子がミステリ作家としてスターダムにのし上がろうかという時期と言える。それでいて、その座にあぐらをかくのではなく、自身の才能をさらに磨こうとする意志があったことが、この短編集を読むとよくわかる。掌編のような短さの作品も多い中で小池は、様々なタイプのミステリをあえて書こうとしているのだ。(つづく)2020/06/11
シュラフ
26
ショートショート作品。初版が1989年というから小池真理子の若い頃の作品。特段の不満もなければ、満足もない。この後に小池真理子という作家の作品がだんだん練れたものになっていくのを考えると、これは発展途上の作品集ということになる・・・。表題の「キスより優しい殺人」は美しい人妻に魅入られて、その人妻による旦那殺しの殺人犯に仕立てられてしまう男の物語。歪んだ欲望から得るものは大いなる不幸な結末である。そして自らの欲望のために人を利用しようとする者にも決して幸福な結末は訪れない。人間の性(さが)と運命は悲しい。2015/07/18
ザ ネ
19
今で言うイヤミス。1989年に刊行されて、1話追加されて1991年に新たに刊行された短編集。時代を感じさせる作品もあるが、それがまた良い。その時代だからこそ成り立つ話もあるし。若ぶってる訳では無いですが、「四度目の夏」の赤電話が分からなくてググりました(汗)どの話も毒が強かった!今の時代に読んでも十分面白い短編ばかりでした。それにしても便利な世の中になったな〜。最初から好きなタイプの話だった。少し時間が空いた時に読むのに丁度いい。2019/06/09