内容説明
実力者の取締役に認められた直後、柳沢誠一は社内麻雀で役満の九連宝燈を上がった。イカサマだった。同僚たちは気づかなかった。そのとき、柳沢は背後に視線を感じた。矢代美根子がいた。恐怖が襲った。もし美根子が真相を明かせば、卑劣漢とされ出世競争からも…。美根子の口を封じるため、柳沢は周到な計画を立てた(表題作)。企業社会の人間関係に翻弄される男たちを描く、巨匠の傑作集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Schunag
10
角川文庫版にて。おそらく収録作は同一。高度成長期の企業で出世コースに乗っている男性サラリーマンの暗い物語を収録。当時の日本の後進性(と言い切ろう)にゾっとする。もちろん公害や企業活動や差別(当時でいう「混血」への)といった問題に警鐘を鳴らす作品たちではあるが、むしろ当然の前提として在る男性たちの「有害な社畜性」が恐ろしく、とくに「鬼の報酬」の異様なラストがすごい。確かな筆で描かれる精細な風俗描写が今や価値を持つ。昭和のホワイトカラーの地獄を学ぶのに最適な一冊。日本社会も発展はしたんですね。2024/08/10
Mzo
9
完全にタイトルだけで借りてきた本。ギャンブル小説かと思いきや、昭和の企業小説でした。好みはあるだろうけれど、読みやすい。ところで、九連宝燈は流石にあがったことがない。生きているうちに一度はあがれるだろうか。2021/08/10
アヴィ
0
もし上がることが出来たら、その瞬間心臓麻痺で死んでしまうといわれる九蓮宝燈。勿論自分も上がったことはないし、そもそも狙うこともない。表題作ではそんな九蓮宝燈にまつわるビジネス小説。配牌の段階で既に九蓮の可能性が…。現実にはなかなか起こり得ないが、起こり得ないからこその、サラリーマンのひりつくような感覚が伝わる。自分ならどうする。身につまされる昭和のサラリーマンは多いのではないだろうか。2025/02/02